“西のワークマン”になれるか?「たまゆら」初のカジュアル店の勝算

大阪北部を中心にワークウエアショップを展開している「たまゆら」が9月6日、大阪市内に一般客をターゲットにした新業態店「たまゆらアスレ」をオープンしました。

ワークウエアを一般向けに売り込んで成功したのは、ワークマンが有名です。たまゆらは、ワークウエア業界のガリバー、ワークマンに続くことができるでしょうか。商品の特徴と戦略を取材しました。


滑りにくいスニーカーは980円

たまゆらアスレがオープンしたのは、大阪市鶴見区の「イオンモール鶴見緑地」です。約180平方メートルの店内には、アウターやシューズ、インナーウエアなどが並びます。

伸縮性の高いストレッチジャケットは2,980円(税別、以下同)、雨の多い秋に活躍しそうな防水加工のアウターは2,000円、滑りにくいソールを使ったスニーカーは980円と、どれも手が届きやすい価格です。

シューズは980円の商品も。既存店でも売れている滑りにくいタイプも扱う

店内は白を基調にした明るい雰囲気で、躍動感のあるマネキンが目を引きます。店舗が入る2階には、若者に人気のアパレルブランドのショップや、カフェが並び、集客が期待できそうです。

大々的な宣伝はしなかったそうですが、割引券を配ったこともあり、オープン当日は多くの客でにぎわいました。

たまゆらは、1965年創業のワークショップです。「しごとぎや たまゆら」の看板で、大阪と京都に19店舗を展開し、軍手や作業服、安全靴などを販売しています。自社で縫製工場を持ち、刺繍加工なども行っていて、2019年3月期の売上高は55億円です。

「ワークマンプラス」開業前からリサーチ

一般客を狙ったワークウエアといえば、ワークウエアショップ大手のワークマンが立ち上げた「ワークマンプラス」が頭に浮かびます。

2018年9月に東京都立川市の「ららぽーと立川立飛」に1号店をオープンして以来、大都市圏のショッピングセンター(SC)やロードサイドに次々と出店。機能性の高いウエアを、低価格で売る戦略が消費者の心をつかみました。

バイク愛好家の声で改良された防寒ジャンパーや、妊娠中の女性の間でヒットした滑らない厨房シューズなど、ユニークな商品も話題になりました。ワークマンは、2020年3月末までにワークマンプラスを167店舗まで増やす計画を立てています。

実はたまゆらは、「ワークマンプラス」が登場する前から一般向けへの展開を考えていました。たまゆらの広報担当者は「少子化や団塊の世代の大量退職で、建設現場で働く人が減っています。3年ほど前から客層の拡大を検討してきました」と明かします。

最初は、既存店のレイアウトを変えたり、商品のカラーバリエーションを増やして、客層を広げようとしましたが、うまくいきませんでした。そこで、一般客を呼び込みやすいショッピングセンターに出店しようと、リサーチしていたのです。

たまゆらの広報担当者は「ワークマンプラスの開業のニュースを聞いた時は正直、やられた、と思いました」と振り返ります。担当者は、すぐにワークマンプラスの立川立飛店を見に行き、品質の高さやアイテム数の多さに感心したといいます。

ワークマンとの戦略の違いは?

全国に800店以上を展開するワークマンは、自社のプライベートブランドの服を大量に作って、安く販売するのが特徴です。手袋やパンツといった細かいアイテムごとに担当バイヤーがいて、海外で開かれるアウトドアウエアの展示会などを参考にしながら、商品を作っています。

一方、たまゆらアスレは、国内のワークウエアメーカーの商品を選りすぐった「ワークウエアのセレクトショップ」として違いを出そうとしています。

白を基調にした「たまゆらアスレ」の店内には、国内のワークウエアメーカーのヒット商品が並ぶ

広島県や岡山県に集積するワークウエアメーカーは、機能性だけではなく、デザイン力の高い、こだわりのウエアを作っています。たとえば、ワークウエアで流行が続く、デニム生地ひとつをとっても、岡山県のジーンズの洗い加工業者に委託し、独特の風合いのワークウエアを作るメーカーもあります。

しかし、いくらこだわりの商品を作っても、一般の人にはあまり知られていません。たまゆらアスレは、ワークウエアメーカーにとっても自社の商品を一般客に知ってもらえる絶好のチャンスになるのです。

「会社の規模の違いから言っても、ワークマンに挑むというつもりはまったくありません」と言い切るたまゆらですが、「1号店が波に乗れば、関西圏で2号店、3号店を出したい」と意気込みます。

肌寒くなりコートやジャケットなどの重衣料が売れる、これからの季節に勝負をかけ、年間2億円の売り上げを目指します。今後は、夏に活躍するファン付きウエアとは逆の発想で生まれた、「ヒーター付きウエア」などを目玉商品として投入する予定です。たまゆらにとって熱い、秋冬シーズンが始まろうとしています。

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