映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』楽曲試聴&トークイベント!「もしこの曲が使えなかったらどうしようかと」

天才作家・太宰治が死の直前に完成させた「人間失格」は、累計1200万部以上を売り上げ歴代ベストセラーのトップを争う、“世界で最も売れている日本の小説”。その小説よりも遥かにドラマチックだった<誕生秘話>を太宰自身と彼を愛した3人の女たちの目線から、事実をもとにしたフィクションとして初めて映画化するのが『人間失格 太宰治と3人の女たち』(大ヒット上映中)。

この度、『人間失格 太宰治と3人の女たち』公開と本作のサウンドトラックアルバムリリースを記念して、蜷川実花監督と音楽を担当した三宅純ら登壇による、楽曲試聴&トークイベントを実施。蜷川監督と三宅の出会いから、絶大なる存在感で映画を彩るサウンドトラックの誕生秘話などを本編映像と共に試聴しながら、たっぷりトークをした。

イベントレポート

9 月 13 日の公開から、蜷川実花監督の描く圧倒的な映像の美しさや、太宰演じる小栗旬の艶めかしさ、さらには宮沢りえ、沢尻 エリカ、二階堂ふみ演じる女性たちの凛とした佇まいなど、大きな話題を呼んでいる本作。映画公開とサウンドトラックアルバムリリ ースを記念したトークイベントに、蜷川実花監督、音楽を担当した三宅純、池田史嗣プロデューサー、高石真美音楽プロデューサ ーが登壇した。台本も打ち合わせもなしで始まったフリートークで、蜷川監督は三宅との出会いについて約 20 年前の出来事を振り 返る。「仕事で訪れた BEAMS でもらった BEAMS RECORDS に入っていた曲がすごく気に入ってしまって『誰の曲か分からないけど すごく好き!』と、私がパルコで行った展示会のために作った映像の音楽に使用したいと思ったんです。どうやって交渉したのか覚 えていないのですが、なんとかたどり着いて使わせていただいたんです」。

しかし、そこから二人の交流はなかったというが、蜷川監督は「今回、太宰治を題材にするというとき、3 人の女性の三様の在り方 の面白さが現代の女性に通じると思った」と作品に取り組む際のコンセプトを述べ、音楽に関しては「三宅さんの楽曲だとうっすら確 信を持っていて、プレイリストでずっと聞きながら脚本開発をしていた」という。さらに、パリコレで偶然三宅と席が隣になったことで「お 願いしたいことがあるんです」と三宅に本作で音楽を担当してもらえないか打診したという。

三宅は「まったくいらしていると想定していなかったので」と驚きがあったというと「本当に 20 年ぶりぐらいでしたが、そのときこの映画 の話をされたんです」と、パリコレの再会が、本作参加へのきっかけだったことを明かす。蜷川監督から「三宅さんにお願いしてみま した」と聞いたプロデューサーの池田は「いつかご一緒してみたいと思っていたのですが、日本映画で三宅さんに依頼するのはハー ドルが高いイメージがあったので、蜷川監督から聞いたときは、『どうやってアプローチしたんだろう』びっくりしました」と世界的に活躍 する三宅への意外なオファーの仕方に驚きを隠せない様子だった。

「実花さんの色があるというのは知っていた」という三宅が、監督に提案した曲や実際に使われた曲を、本編映像を流しなが らトークが展開。三宅は「最初に蜷川監督が映像に当てて入れてくれた曲を参考にしながらも、僕はパンチを繰り出して納得 するタイプなので」と自らのアイデアも積極的に提案したという。蜷川監督も「三宅さんは、基本真逆の提案で、どれもパンチ が効いていて衝撃がすごい」と感嘆していたというと「観ていただけると分かると思いますが、同じ映像やセリフでものせる音楽 によってはまったく印象が変わるんですよね」と映画における音楽の力を再認識したとしみじみ。

特に宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ演じる女性たちのラブシーンには「それぞれ意味のあるもの」と強いこだわりを持って 臨んだという蜷川監督は「かなり(演出が)細かかったようで、アクション監督と呼ばれていました」と苦笑い。三宅も、蜷川監 督の独創的な映像表現に呼応するように、さまざまな角度から作品を彩る音楽を提案していったという。「サントラっていつも どういうイメージにしていくかがすごく難しい」という三宅だが「今回は(監督の指示が)明確化されていてとても分かりやすかっ た」と話すと、蜷川監督は「期待感はきっと伝わってましたよね!もともと大好きだし、お願いする際は圧倒的な信頼があるの で細かくオーダーしなくてもよかった」と全幅の信頼を置いていた様子。

トークイベントは、3時間近くにおよぶ大盛況ぶり。クライマックスシーンで使用されたある楽曲について、「この曲をあてた瞬間に物語が女たちのものになるということがハッキリした。もしこの曲が使えなかったらどうしようかと思って」と蜷川監督は振り 返り、池田プロデューサーも「ある意味悲惨なはずなのに、観終わって爽快に終われるのは楽曲のおかげ」と話しつつ、「蜷 川監督の映画は画の濃度が尋常じゃない。そこに音楽が寄り添うのか拮抗するのかという中で、(三宅の音楽は)画に全然 負けてないし、映画が何倍もの力になった。レコーディングで震えたのは初めて」と絶賛。「めちゃくちゃ楽しかった!」と蜷川 監督も、三宅との仕事について「なんて贅沢なんだろうって。絶対大好きな人としかやりたくなかったので、本当にご一緒出 来てよかったと思う。自慢です!」と終始笑顔だった。

『人間失格 太宰治と3人の女たち』公開記念スペシャル・ナイト
Listening & Talk Session 三宅純 with 蜷川実花
【会場】 代官山 晴れたら空に豆まいて
【登壇】 蜷川実花(監督)、三宅純(音楽)、
池田史嗣(プロデューサー)、高石真美(音楽プロデューサー)

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