ニッサンGT-Rが今季初勝利。CRAFTSPORTSが入れ替わる雨中のトップ争いで逆転V【スーパーGT第7戦SUGO決勝】

 シリーズ最後の2戦にカレンダーを移したスポーツランドSUGOでのスーパーGT第7戦は、台風の影響による天候とセーフティカーが絡み、雨量がめまぐるしく変化する荒れた展開を制したCRAFTSPORT MOTUL GT-Rの平手晃平/フレデリック・マコウィッキィ組が今季初優勝。ニッサンGT-Rにとっても2019年シーズン初勝利を飾る結果となった。

 昨年の第6戦から選手権天王山の第7戦へと開催時期を移したSUGOラウンドは、ここまでの積算獲得ポイントによるウエイトハンデ(WH)が軽減され、通常のウエイト×2kg相当からウエイト×1kg相当となり、予選ではシリーズランキング上位勢も健闘。

 コースとの相性+軽めのウエイトによりフロントロウを独占したKEIHIN NSX-GT、RAYBRIG NSX-GTのホンダ勢に対し、タイトル争いを展開するKeePer TOM’S LC500(WH55kg)は2列目4番手、ランク首位を行くWAKO’S 4CR LC500(WH65kg)はQ1突破を果たして8番手と、燃料リストリクター1ランクダウンの影響を感じさせないポジションを手にした。

 一方、開幕から連続2位があったものの、中盤以降苦しい戦いが続くニッサン勢は、CRAFTSPORT MOTUL GT-Rの7番グリッドが最上位で、同じミシュランタイヤを履くMOTUL AUTECH GT-Rは、トラフィックの影響もありQ1敗退で10番手と、決勝での巻き返しを狙う構図となった。

 9月22日決勝当日のSUGO一帯にも、日本列島に迫り来る台風17号の影響が出始めており、宮城県には早くから雨の予報が出ていたものの、降雨はなんとかこらえドライをキープ。

 各陣営とも決勝前ウォームアップ走行ではレインタイヤのスクラブをして備えると、グリッドウォーク中にはコース上には霧雨が舞い始め、チームには難しい選択が迫られることに。

 すべての作業が禁止される13時55分のスタート開始5分前ボード掲示時点で、路面の色が変わるほどの状況となり、レースコントロールからはセーフティカー(SC)スタートが宣告される。グリッド上のマシンではポールシッターのKEIHIN NSX-GT、5番手のWedsSport ADVAN LC500、11番手のZENT CERUMO LC500、12番手のリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rの4台がスリックタイヤを選択した模様で、上位勢はKEIHIN以外は軒並みウエットをチョイス。この判断がSC明けにどう出るかが最初の焦点となった。

 リスタートの判断が下されたのは4周目突入時点。ポールシッターのKEIHIN塚越広大は最終コーナーから思ったような加速をすることができず、続く1コーナーで2番手RAYBRIG NSX-GTジェンソン・バトン、3番手au TOM’S LC500中嶋一貴、そして4番手KeePer TOM’S LC500ニック・キャシディ、にまとめてかわされてしまう。

 後続でもスリックタイヤを選んでいたマシンがたまらず遅れ始め、5周目には24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが4コーナーで、9周目には38号車ZENT CERUMO LC500が3コーナーでスピンを喫し、GT300クラスの首位にもオーバーテイクされるなど、スリックへの選択は裏目に出ることに。

 一方、ウエットを履いた海外ドライバー同士の首位争いは、6周目にニックが、11周目にはバトンが、それぞれ馬の背コーナーの進入でワイドランを喫するも、タイムやポジションを失うまでには至らず。3番手を走っていたau TOM’S LC500がシーズン3基目のエンジン投入による10秒のペナルティストップを消化したため、代わって3番手浮上のCRAFTSPORT MOTUL GT-R以下、300クラスのバックマーカーを処理しながらの単独走行が続いていく。

 15周を経過しても雨量は減らず、気温はスタート時から2度下がった18度、路面温度も3度下降の20度に。そのコンディションのなか、MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリが10番グリッドから猛追を見せ4番手にまで浮上。さらに18周目には5番手を争っていたWAKO’S大嶋和也が、SPひとつめでModulo Epson NSX-GTにアウトから並びかかり、豪快にオーバーテイク。イン側でこらえていたナレイン・カーティケヤンは、たまらずスピンを喫し、さらにポジションを失ってしまう。

 その後、上位勢に大きなポジション変動はないものの、ペナルティストップを経て10番手を走っていたau TOM’S LC500の中嶋一貴が、22周目にARTA NSX-GTを、24周目にカルソニック IMPUL GT-Rをパスして8番手にまで浮上する。

 トップのバトン、2番手キャシディの2台はともに1分22秒台の安定したペースを刻み、5秒前後のマージンをキープ。3番手、4番手を走るミシュランタイヤ装着のGT-R勢も追随すると、先陣を切って2番手キャシディが28周目にミニマムでピットへ。26秒の静止時間だった37号車に続き、29周目に入ったWAKO’S大嶋の2台ともにタイヤ無交換で給油とドライバー交代を終え、レクサス陣営のタイトルコンテンダー2台は最小限のロスタイムでコース復帰していく。

 31周目にルーティンピットへ向かった36号車もタイヤ無交換を選択したレクサス陣営に対し、29周目のARTA NSX-GT、32周目のMOTUL AUTECH GT-Rはレインタイヤ4本交換でピットアウト。23号車ニスモは35秒の静止時間で松田次生をコースに送り出す。

 すると35周目には2番手を走ったCRAFTSPORT MOTUL GT-Rがピットへと向かい、フレデリック・マコウィッキにチェンジ。コース復帰後もMOTUL AUTECH GT-Rの前は守ったものの、2台ともに無交換のWAKO’Sに前へ行かれることに。

 さらに37周目に首位のRAYBRIGのバトンがドライバー交代へと向かい、34.9秒の静止時間で4本交換し、山本尚貴にバトンタッチ。1周目のアウトラップを終え、2周目には2番手KeePerの平川との差は2秒618でコントロールラインを通過することになろ、それでもまだタイヤの発動はなく38周目のハイポイントでインをズバリ平川に差されてしまう。

 これで平川が首位浮上に成功し、続くラップではトップの平川は2番手山本に4秒190差まで一気に突き放していく。また37周目にはMOTUL AUTECH GT-Rが4コーナー立ち上がりでCRAFTSPORT MOTUL GT-Rを捉え、GT-R勢のポジションが入れ替わる。

 すると39周目の2コーナーでカルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹がスピンオフしグラベルへ。脱出できずにSC出動となる。これでステイアウトでルーティンを引っ張っていた先頭走行のランキング3位、DENSO KOBELCO SARD LC500は上位浮上の目が厳しくなり、実質のトップ3はKeePer、RAYBRIG、そしてWAKO’Sの構図に。

 41周目にホームストレート上での整列を経て、レースは44周目から再開。すぐさまピットレーンへ飛び込んだDENSOが去ると、明らかに増えた雨量に高い水煙を上げながら、周回遅れを処理した平川が首位で1コーナーへ。すると後方からはCRAFTSPORT GT-Rのマコウィッキが23号車、6号車、1号車を立て続けにパスして2番手に躍進。対照的にRAYBRIGの山本やWAKO’S山下はペースが上がらず、ずるするとポジションを落としていく。

 またダンロップタイヤを履く64号車Modulo Epson NSX-GTの牧野任祐が猛然と追い上げ、46周目の最終コーナーから松田次生、山本尚貴のバトルに加わると、47周目の2コーナー立ち上がりでNSX対決を制し4番手に上がってくる。そのままMOTUL AUTECH GT-Rの動きを数周にわたって見極めた牧野は、52周目の4コーナー立ち上がりからシケイン進入までで松田を捉え表彰台圏内に浮上する。

 同じ頃、タイヤ無交換で粘っていたレクサスの2台はグリップ不足に苦しみ、WAKO’S山下は48周目にたまらずピットへ。粘るKeePer平川だったが山下と条件は同じで、53周目の1コーナーでラインがワイドになると、続く54周目にCRAFTSPORT MOTUL GT-Rマコウィッキに、55周目にModulo Epson NSX-GT牧野に立て続けに1コーナーアウトからかわされ、苦しい展開に追い込まれる。

 57周目には同じシチュエーションで23号車MOTUL AUTECH GT-Rにも先行され、37号車KeePer TOM’S LC500としては、残り周回でタイトルを争う6号車、8番手にまで下がったWAKO’S 4CR LC500の前でフィニッシュする戦いとなっていく。

 相変わらずトラック上の雨量が減らないコンディションのなか、荒れた天候のニュルブルクリンク24時間耐久などで抜群のパフォーマンスを示してきたミシュラン・マイスターのマコウィッキが水を得た魚のごとく異次元のペースで飛ばし、60周目突入時点で2番手牧野に対し約10秒のマージンを構築。ラップあたり数秒のアドバンテージを得ながら周回を重ねていく。

 2番手Modulo Epson NSX-GT、3番手MOTUL AUTECH GT-Rともに単独走行が続き、残りは10周。SC明けにピットへ飛びこみルーティンを終えた5番手KEIHIN NSX-GT、6番手DENSO KOBELCO SARD LC500に対し、WAKO’S山下がヒタヒタと迫ってくる。すると75周目のレインボーでついにDENSO中山雄一を捉え、6番手に浮上する。

 そのままレースは81周のチェッカーを迎え、3号車CRAFTSPORT MOTUL GT-Rが今季初優勝。マコウィッキにとってはホンダ陣営所属以来、5年ぶりのGT500勝利。そして平手晃平はレクサスからGT300を経てニッサン移籍後の初優勝、そして2017年以来となるSUGO3勝目を飾った。

「ここまでのバッドラックを払拭できてうれしい」と喜びを語ったマコウィッキに続き、平手も「ニッサンでの初勝利。ここSUGOはよく知るコースだし、最後は僕の意見を採用してもらった。最高の場所で勝てた」と、第2の故郷で喜びを語った平手。

 また2位に入ったナカジマ・レーシングのModulo Epson NSX-GTも今季初表彰台。牧野も2016年デビュー戦以来のGT500表彰台となった。

 一方、タイトル争いは4位KeePerが8ポイントを加算し、対するWAKO’Sも6位で5ポイントを追加。70点の首位WAKO’Sに対しKeePerは63点と、その差は7点。続く11月2〜3日の最終戦ツインリンクもてぎで実質、レクサス同士の王座決定戦となる。

今季からニッサン陣営に加入した平手とマコヴィッキにとってはうれしいシーズン初勝利。ニッサン陣営の今季1勝目にもなった

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