金星・10勝、躍進の秋 朝乃山、三役は目前

朝乃山(左)が寄り切りで明生に敗れる=両国国技館

 県出身力士で30年ぶりの金星を含む10勝を挙げ、大相撲秋場所で2度目の殊勲賞を受賞した朝乃山。「2桁はうれしい」と大きくうなずきながら、終盤まで争った賜杯レースでは一歩届かず、目標にした新三役入りも微妙な状況となり、悔しさもにじませた。

 5月の夏場所で初優勝したが、他の力士との比較で7月の名古屋場所での新三役入りはならず、東前頭筆頭にとどまった。初めて上位陣総当たりとなったこの場所では、鶴竜、白鵬の両横綱や大関高安らにはね返され、7勝8敗と負け越し。それでも大負けはせず、秋場所で再度、全上位陣と対戦し、三役昇進に挑んだ。

 「リベンジしたい」と夏巡業で稽古を重ね、今場所は鶴竜と大関の豪栄道、栃ノ心を破り、堂々の2桁勝利を達成。名古屋場所で乗り越えられなかった壁を一つ越えたと言える。

 技量的な面でも、左まわしを取ってから右を差し、一気に攻める相撲が光った。得意の四つ相撲に立ち合いの鋭さが加わり、苦手にしていた関脇御嶽海や平幕玉鷲も初めて破った。

 ただ、もう一つの目標だった三役入りは、再び運に恵まれず微妙な状況。得意の左上手が1枚しか取れず、寄り切られた千秋楽でもし勝っていれば昇進ムードが高まったかもしれないと、悔やまれる。

 10日目にトップに並んだ優勝争いも、11、12日目と連敗したのが惜しかった。角界に世代交代の兆しがある中で、幕内2度目の優勝は1学年上の御嶽海に先を越されたが、朝乃山にも「横綱に最も近い力士」と評価する声がある。「来場所もトップ争いについていく相撲を取る」と決意を語る25歳の大器。次は運を必要としない実力で、三役を勝ち取ることを期待したい。 (東京支社・楠浩介)

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