レッドブル・ホンダ密着:早めに動いたピット戦略が奏功しフェルスタッペンが3位表彰台/F1シンガポールGP日曜

 抜きどころがほとんどないマリーナ・ベイ・ストリート・サーキットで、マックス・フェルスタッペンが4番手からスタートして、3位表彰台を獲得した。レッドブル・ホンダにとって、表彰台は第12戦ハンガリーGP以来、今シーズン6回目である(いずれもフェルスタッペン)。

 今回、レッドブル・ホンダがF1第15戦シンガポールGPで表彰台を獲得できた最大の理由は、「レッドブルの適切なピット戦略が功を奏した」(田辺豊治F1テクニカルディレクター)からだった。

 レースは、ポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)を先頭に、スローペースでスタートした。予選でポールポジションを獲得したものの、フェラーリはロングランに不安を抱えていたからだ。いかに今年のレースが序盤スローペースだったかは、昨年は10周目の段階でトップは1分47秒台に突入していたのに対して、今年は10周目でまだ1分49秒台。今年、先頭のルクレールが1分47秒台に突入したのは、17周目だった。

 このスローペースはレッドブル・ホンダにとって、歓迎すべき展開だった。

「土曜日の予選で、ライバルたちが見せたペースを考えれば、この展開は僕にとって、ラッキーなことだった」(フェルスタッペン)

 予選でポールポジションのルクレールからコンマ6秒、2番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)と3番手のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)からはそれぞれコンマ4秒離されて4番手にとどまったフェルスタッペンにとって、日曜日のレースは「何も起きなければ、かなり厳しいレースになる」(フェルスタッペン)ことが予想されていたからだ。

 ところが、先頭のルクレールがスローペースにしてくれたおかげで、フェルスタッペンは上位3台に接近したまま、レースを続けることができた。18周目の段階で4番手のフェルスタッペンは先頭から5.6秒。3番手のベッテルとはわずか1.9秒差だった。

 そこでレッドブル・ホンダは19周目にアンダーカットを狙って、フェルスタッペンをピットインさせる。ところが、同じタイミングでベッテルもピットインしたため、ベッテルへのアンダーカットは成功しなかった。ところが、「15周目前後からは上位勢のタイヤが一気にペースダウンしていったため、交換した新品のハードタイヤのペースが想定していた以上に速くなったのである。

2019年F1第15戦シンガポールGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 18周目の時点でフェルスタッペンとハミルトンの差は4.6秒あったが、1周につき約1.5秒速いペースで走行していたフェルスタッペンはピットアウト後、数周で計算上、2番手を走行していたハミルトンを逆転していた。

「メルセデスはハンガリーGP同様、タイヤがもう少し長く持つと思ったんでしょう。でも、それがうまくいかなかったということだと思います」(田辺TD)

 レース終盤、「ドライバーが思うのと違った部分もあって、何度かパワーユニット(PU/エンジン)のモードを変えて走っていた」(田辺TD)というフェルスタッペンは、ハミルトンの猛攻をしのいで3位でフィニッシュした。

 しかし、フェルスタッペンは「僕らはいつだって勝ちたいと思っているから、今日のレースはそれほどエキサイティングじゃなかった」と、過去5回の表彰台に比べると、喜びは控えめだった。それは、ホンダにとっても同様だった。

「今回もフェラーリが明らかに速かった。この速さはこの後も続くでしょう。今年のフェラーリはストレートが速く、ストレートはどのサーキットにもあります。さらに低速コーナーでのパフォーマンスがも向上し、大きく底上げされているようです。したがって、この先、どのサーキットへ行っても脅威になると思います」と、田辺TDは警戒する。

2019年F1第15戦シンガポールGP ホンダ田辺豊治F1テクニカルディレクター

 今後、レッドブル・ホンダはメルセデスだけでなく、フェラーリとも三つ巴の優勝争いをしていくことになるだろう。そうなれば、この日、ボッタスが協力してハミルトンの4位フィニッシュをアシストしたメルセデスのような、チーム戦術が必要となるかもしれない。6番手でスタートして、確実に6位を獲得したアレクサンダー・アルボン。優勝争いはできなかったが、レッドブル・ホンダにとっては今後に向けて収穫もあったシンガポールGPの3位&6位だった。

2019年F1第15戦シンガポールGP 3位表彰台を獲得したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

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