インディ参戦10年目の最終戦も不運に見舞われた佐藤琢磨「上がったり下がったり僕らしいレースだった」

 NTTインディカー・シリーズは年間17戦もありながら終了は早い。今年も9月に最終戦を迎えた。

 最終戦の舞台はラグナセカ。カリフォルニア州にあるこのサーキットは、名物コーナー、コークスクリューのあるコースとして知られている。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)の佐藤琢磨は、ここで初めてレースをすることになった。今季インディカーで10年目を迎えたベテランが、初めてのコースで最終戦を迎えるのは不思議なものだ。

 この土曜日にはRLLRのチームから、琢磨の2020年残留が発表になった。昨年に続き早い時期の発表であったが、琢磨は「まずは来季もこの体制で走らせてもらえることに、感謝したいですね。今年はここまで自己ベストのシーズンで来ていましたし、来年はチャンピオンを狙いにいくのはできないことではないと思っています……」と語った。

 そんな朗報とは反対に、琢磨は木曜日のテスト走行から苦戦した。チームメイトのグラハム・レイホールとセッティングを分けながら手探り状態であったものの、初日が23番手というのは、いただけなかった。

 それでも金曜2回、土曜日1回のプラクティスでポジションを上げ、土曜日の午前中には5番手のタイムを出していた。

 予選に向けて期待十分だったが、グループ2でアタックして予選ではブラックタイヤでは前のマシンに引っかかったものの、レッドタイヤでは一時5番手に。しかしその後、グラハムらに逆転されて8番手でQ2進出ならず。総合16番手で予選を終えた。

「午前中は良かったのですが、予選の時に暑くなった気温と路面にうまく合わせられなかった……」と悔しがった。

コークスクリューを走行する佐藤琢磨

 ラグナセカでのインディカー開催は久しぶりな上に、路面コンディションの影響でたいやのデグラデーションも大きく、タイヤと燃料を含めたレース戦略は、各チームとマシンごとに分かれていった。

 無難な戦略は、90周のレースを3回ピットストップに分けるものだが、理論上2回のピットストップでもいけなくはない。

 全24台中21台がレッドタイヤを履いてスタートする中、琢磨とウィル・パワー、チャーリー・キンボールはブラックタイヤでのスタートを選択、注目された。

 琢磨自身あまり良くなかったというスタートで、ポジションを前後に入れ替えながらオープニングラップを終えて戻ってくる。3周目に17番手となって順位が膠着するとチームは作戦変更。琢磨をピットに早めに呼んだ。

「最初はブラックタイヤで様子を見ていたんですが、燃費を抑えた走りをするとどうもペースが悪いのでピットが早めに作戦を変更しました。ニューのレッドタイヤも余っていたので、それでペースをあげようと」

 チームの読み通りなのか、琢磨はスピードを取り戻し前のマシンがピットインし始めると、順位を上げていった。琢磨はグラハムの後ろで抜きあぐねていた。グラハムはステファノ・フェルッチを攻略できずペースが上がらない。

レイホールとフェルッチにペースを妨げられる佐藤琢磨

 そこに幸運なイエローコーションが出る。コナー・デイリーがターン2でマルコ・アンドレッティと接触してスピン。3周のコーションの後にリスタートとなった。

 そのリスタートで琢磨が後続のフェルッチに追突されスピン。なんとか立て直してコースに戻ったがほぼ最後尾となってしまった。

 その後も走り続けるが今度はコークスクリューの前で3ワイドとなり、マテウス・レイストと接触。今度は右フロントにダメージを受けた。

「この後、ターン10を回った時にステアリングがパッキーン!っていったんです(苦笑)。ストレートでもまっすぐ走れない状態で、一度ピットに入ってメカニックに診てもらいましたが、今年最後のレースだし、ダブルポイントで最後までわからないので、走り続けました……」

クラッシュの影響を確認するメカニック

 結果は1周遅れの21位完走だったが、ダブルポイントの影響は大きく、年間ランキングを6位から9位に落として今シーズンは終わった。

「今日は僕らしいレースでしたね、上がったり下がったり(苦笑)。コークスクリューで当たった後、ステアリングがおかしかったのですが、ダブルポイントのこともあるし最後まで走ろうと思って走り続けました」

「ぶつかったフェルッチもレースが終わったら、謝りに来てました。今日はダブルポイントでだいぶランキングも落としてしまいましたが、今年は良いシーズンを戦えたと思います」

「2勝してポールも2回。自分の記録も更新できました。引き続きこの体制で来年も走れるのはうれしいし、エアロスクリーンとかで変わってくることもあるけれど、タイトル争いができると信じてます」

「今年も一年ファンやスポンサーの皆さんに支えていただいてありがとうございました。だいぶベテランになりましたが、来年も頑張りますから(笑)」と笑顔で締めくくった。

 参戦10年目は初のマルチ勝利を達成した佐藤琢磨。11年目となる2020年シーズンの活躍も期待したい。

レース後に、レースディレクターを務めるアリ・ルイエンダイクとヘルメット交換をする佐藤琢磨

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