社説:アスベスト対策 飛散防止強化は不可欠

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 吸い込むと肺がんや中皮腫を発症する恐れがあるアスベスト(石綿)について、建物の解体や修理の現場からの飛散防止対策を国が強化する方針だ。

 業者に対し、全ての住宅やマンションなどを解体、修理する際にアスベストが含まれているかどうかを事前に調べるよう義務づける。中央環境審議会(中環審)の小委員会が方針案をまとめた。

 アスベストが多く使われた築後50~60年前後の建物の多くが改修や解体時期を迎えている。京都市ではホテル建設ラッシュに伴い古いビルの解体が相次ぐ。アスベスト封じ込めをこれまで以上に着実に、かつ急いで進めてほしい。

 現行法では、周辺に飛び散りやすい吹きつけ材や断熱材が使われている場合にのみ、事前に工事実施の届け出が必要となっている。

 しかし、肺がんや中皮腫の発症は、工事に携わった作業員だけでなく、アスベストを使った工場周辺に住んでいただけの人にもみられることから、専門家や患者団体は飛散対策の強化を強く要請していた。

 新たな規制では、解体や修理する建物のスレート板や石こう板などにアスベストが塗り固められているかどうかも調査義務とする。

 面積が一定基準を超える建物については、自治体への報告義務も課す方向だ。

 スレート板などに塗り固められているアスベストは、破砕時に飛散することが国の調査などで明らかになっている。

 環境省は大気汚染防止法を改正して対応する方針だ。

 兵庫県や大阪府などの一部自治体ではすでに実施しており、法改正で全国に網をかけることになる。

 自治体による検査のノウハウや飛散防止の技術や知識が先進自治体から他の自治体に伝わるような仕組み作りも併せて求めたい。

 アスベストを巡っては、今月に入り、裁判所で賠償金の利息に当たる遅延損害金の起算をがん診断日とする判決が相次いだ。

 がん診断を受けた後の労災認定日とするより賠償金が増えることになる。また、中央労働基準監督署は1973年に死亡した男性について、仕事中に吸ったアスベストによる中皮腫が死因だったことを認め特別遺族給付金を支払った。

 司法、行政ともにアスベスト被害者を救済する方向は明確になっているといえる。これ以上の被害者を増やさないためにも、飛散防止策の強化は不可欠といえよう。