グリニッジ天文台の天体写真コンテスト、2019年の受賞作品が発表

イギリスのグリニッジ天文台は9月12日、ロンドンの国立海洋博物館において、同天文台が開催した天体写真コンテスト「Insight Astronomy Photographer of the Year 2019」の受賞作品を発表しました。

■総合優勝作品は印象的な月食の連続写真

2019年の総合優勝は、ハンガリーの写真家László Francsics氏の作品「Into the Shadow(影の中へ)」。今年の1月に観測された月食を連続撮影した35枚の写真をもとに、印象的な1枚の画像が生み出されています。

論評では作品としての芸術性の高さだけでなく、見る者に月食への興味を抱かせるインパクトの強さや、撮影された画像の高い品質についても触れられています(※作品名の日本語訳は筆者によるもの。以下同)。

■各部門の優勝者には11歳の少年や自作の望遠鏡で挑んだ写真家も

同コンテストではテーマ別に11の部門が設けられており、各部門の受賞者も発表されています。総合優勝を果たした「Into the Shadow」は、11部門のうち「Our Moon(われわれの月)」部門の優勝作品でもあります。

「Young Competition(ヤングコンペティション、若年層)」部門の優勝作品「Stellar Flower(星の花)」は、オランダに住む11歳の少年Davy van der Hoevenくんによるもの。題材となったのは「いっかくじゅう座」の散光星雲「ばら星雲」です。

地元紙によると、彼は3晩かけてばら星雲を撮影。毎回異なるフィルター(いわゆるハッブルパレット)で撮影した画像を合成して、今回受賞した作品に仕上げました。受賞作品の紹介ページによると、総露光時間は16時間15分に及びます。

また、「Galaxies(銀河)」部門の優勝作品「Shells of Elliptical Galaxy NGC 3923 in Hydra(うみへび座の銀河NGC 3923のシェル構造)」は、ニュージーランドの天体写真家Rolf Wahl Olsen氏が自作の12.5インチ(約30.6cm)望遠鏡で撮影したものです。

Olsen氏は、楕円銀河NGC 3923が持つシェル状構造合計40時間以上の露光時間を費やして捉えました。ヨーロッパ南天天文台(ESO)Oana Sandu氏は論評のなかで、宇宙望遠鏡や地上の大型望遠鏡よりもはるかに小さな望遠鏡で撮影されたこのように精細な画像を目にしたときの驚きを「『アゴが落ちる効果』を得る」と表現しています。

なお、グリニッジ天文台の公式Webサイトで公開されているコンテストの特設ページでは、各部門の入賞作品を公開中です。

関連外部リンク:Insight Investment Astronomy Photographer of the Year 2019

Source: RMGRijnmond
文/松村武宏

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