西島秀俊が不器用で生真面目なヤクザ役を熱演! 西田敏行ら共演者から「アドリブの流れ弾が飛んでくる」

西島秀俊が不器用で生真面目なヤクザ役を熱演! 西田敏行ら共演者から「アドリブの流れ弾が飛んでくる」

今野敏の「任俠」シリーズ小説の中でも人気の一篇を映画化した「任俠学園」。社会貢献がモットーのヤクザ、阿岐本組のナンバー2・日村誠司に扮した西島秀俊に撮影時の裏話などを聞いた。

──まずは、“任俠”ものにオファーされた感想は?

「最初は“自分にヤクザ役ができるのか?”と思いましたが、原作と台本を読み、納得しました。本作はコメディー・ファンタジーで、登場するのは社会のルールをちゃんと守り、シートベルトもちゃんとする、ヤクザらしくないヤクザで。自分がブレンドされると、不器用で生真面目で、人に頼まれたら断れない日村になるんだな、と」

──任俠の学園コメディーに、笑ってホロッとなりました。

「最近暗いニュースが多いので、とにかく笑ってスカッと気持ちよく映画館を後にしていただきたいと思いました。笑いに関しては西田敏行さんと生瀬勝久さんの丁々発止にどう入るか、時々飛んでくるアドリブの流れ弾をどう受け、どう返すか、ということがほぼ全てでした」

──西島さん発のアドリブも?

「いえ、皆さんのアドリブに反応するだけでいっぱいいっぱいです。木村ひさし監督もかなり演出してくださるので、それに応え、一生懸命やらせていただきました。しかも意外に無茶ぶりが多く(笑)、“西田さんのモノマネをしてくれ”とか。いろいろ難しかったですが、全員で一生懸命作った、楽しく充実した日々でした」

──みんなに振り回され、頑張る日村が、とても魅力的でチャーミングでした。

「まさに中間管理職ですよね。少し変わった趣味を持つ子や、意外と優等生の中にも学校に居場所がない子がいて。そういう子たちと無理やりつながって心を開いたり、自然と心をつなげていく日村は、とても魅力的に感じました。そもそも阿岐本組の面々はすごく時代錯誤で、現代とつながっていないような人たち。でもだからいろんなことが見えるし、生活の知恵的なものを持っている。実は悪いことをして誤魔化している、俗にいう“いい人”や、見て見ぬふりをしている人など、いろんな問題を表に出して解決していく展開もすごく魅力的です」

──日村が時代遅れでズレたことを言う、いわゆる“ボケ”演技でポーカーフェイスを貫くのは、結構大変だったのでは?

「本当に。つい噴き出してしまうNG集をエンドロールでご覧いただけますが(笑)、収録できないくらいひどいものもありました。本当にばかばかしいことを真剣にやっていたので、ふとした拍子に客観的になると笑ってしまう。でもあくまで真剣にやるのがコメディーの鉄則なので、頑張りました(笑)」

──西田さん、生瀬さんをすごい、と実感された場面は?

「生瀬さんはもう天才ですから、何でもないシーンが、どうしても面白くなってしまうんです。西田さんに至っては驚きというか、どうすればいいか分からない、不思議な感覚に襲われて。“え、ここで泣くの!?”とか(笑)。台本にないので一瞬ギャグかと思って笑いそうになったら、本当に涙を流されていて。それが実際にすごく感動的な場面になったりする。本当にスゴイ!」

──それに対応していく力も、試されますよね。

「西田さんが演じる親分が生徒に真剣に話をするシーンで、実際、生徒が改心しちゃいそうで、物語が変わってしまうと、心配になりました(笑)。若手俳優に“お前、説得されちゃだめだからな”と、どっちの立場か分からないアドバイスをしたほど。それくらい説得力のあるアドリブでした。撮影後に反省会を何度も開き、西田さんも、生瀬さんも参加してくださる時もあって、みんなで話を聞いてもらい、あの反応で良かったのかとか、相談したりしてました(笑)」

【MY MOVIE~漢気!】

最も好きな“漢気映画”は、東宝版の「次郎長三国志」シリーズです。“清水の次郎長”は、多くの方々が撮られていますが、マキノ雅弘監督が撮られた東宝版が大好きです。第九部まであって、その成り立ちからして“漢気”なんですね。
当シリーズは、森の石松を演じた森繁久彌さんが、大スターになった映画でもあります。確か「ONE PIECE」を描かれている漫画家・尾田栄一郎さんも大好きで、DVD化された際にはイラストを描かれています。多分に影響を受けていると思うのですが、本シリーズの物語を簡単に言うと、「ONE PIECE」同様、親分である次郎長を慕って色んな男たちが集まって来る、という話。
途中で「七人の侍」(’54)に出演するため、豚松役の加東大介さんが降板しなければならず、そのため豚松が殺されることになり、物語は一気に暗くなっていくのですが…。モノクロだし長いですが、とにかく素晴らしい作品なので、このコラムを読んでくれたうちの1人くらいは見てほしいです(笑)。

【プロフィール】


西島秀俊(にしじま ひでとし)
1971年3月29日東京都生まれ。牡羊座。A型。近年の出演作にドラマ「きのう何食べた?」(テレビ東京系)、映画「空母いぶき」(’19年)など。映画「風の電話」(’20年)が公開を控える。

【作品情報】


「任俠学園」
9月27日公開
原作/今野敏 脚本/酒井雅秋 監督/木村ひさし 出演/西島秀俊 西田敏行 伊藤淳史 葵わかな 葉山奨之 桜井日奈子ほか

社会貢献がモットーのヤクザ・阿岐本組の組長(西田)が、経営不振の高校の建て直しを引き受ける。No.2の日村(西島)は気の進まないまま子分を引き連れ、学校へ。ところが無関心な高校生と事なかれ主義の先生が待ち受け…。

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取材・文/折田千鶴子 撮影/須田卓馬
ヘア&メーク/市川温子(HITSUJI) スタイリング/カワサキタカフミ(MILD)

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