通勤混雑なら、テレワークより時差出勤?希望差2倍のワケ

今年9月9日、台風15号が首都圏を直撃しJRは計画運休を実施。日経新聞は277万7,000人に影響が出たと報じました。

地震などの災害は突然発生します。その点、台風はある程度予測ができるので数日前から対策することが可能です。今回、JRは事前に計画運休を決めることができました。

一方、災害ではありませんが、何年も前から通勤混雑の発生が予測されているイベントがあります。2020年に開催される東京オリンピックです。

2020年7月24日~8月9日の約2週間、首都圏には国内外から観光客が訪れます。あらかじめ通勤混雑が予測される時、あなたはどんな準備をし、どのように働きますか。


通勤混雑が激しくなりそう62.8%

しゅふJOB総研では、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦層”に、「東京オリンピックと仕事への影響」に関するアンケート調査を行いました。

全回答者694名の中で、東京オリンピック開催期間中、仕事に何らかの影響が「ありそう」と回答した人は27.1%。その人たちに、どんな影響がありそうかを尋ねた結果が以下です。

有効回答数188人

「通勤時間帯の混雑が激しくなりそう」との回答が最も多く、6割を超えています。やはり通勤混雑を心配する人が多いようです。

次に、全回答者に向けて、東京オリンピック開催期間中に希望する働き方について尋ねました。

有効回答数694人

最も多かったのは「オリンピックを理由とした希望はない」ですが、21.5%が「通勤混雑を避けるため時差出勤したい」と答えています。一方、「テレワークしたい」と答えた人は12.0%で、時差出勤希望の半分程度です。

テレワークより時差出勤

続いて、「仕事にどんな影響がありそうですか」との質問に「通勤時間帯の混雑が激しくなりそう」と回答した一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)在住者のみを抽出しました。通勤混雑への対処が最も必要だと考えられる層です。

東京オリンピック開催期間中に希望する働き方について、この層と全回答者の結果を比較したのが以下のグラフです。

有効回答数114人(一都三県)と694人(全回答者)

「通勤時間帯の混雑が激しくなりそう」と回答した一都三県在住者は、全回答者よりも「通勤混雑を避けるため時差出勤したい」を選んだ比率が高く、4割近くに及んでいます。

一方、「通勤混雑を避けるためテレワークしたい」と回答した人は、やはり時差出勤希望の半分程度で21.1%でした。

仕事と通勤はセット

フリーコメントには、通勤を不安視する声が多く見られました。“働く”ことと“通勤する”ことはセットだと認識している人は多いのだろうと思います。

「通勤に、かなり時間かかりそう」「通勤時の交通機関が不安です」「通勤時のトラブルが発生しそうなので極力自宅から近い所を希望したい」「オリンピックで観戦客が増えたら電車での通勤は無理だと思う」「時間通りに通勤できるのか不安」

通勤混雑が予測されていたとしても、仕事と通勤をセットで考えると、現実的選択肢としてテレワークは挙がりづらくなります。

しかし一方で、しゅふJOB総研が行った別の調査では、仕事条件の一番人気は在宅勤務でした。テレワークに対する働く主婦層の潜在的ニーズは高いのだと思います。

テレワークを阻害する6つの原因

仕事探しにおいては在宅勤務が一番人気なのに、通勤混雑時の対応となると時差出勤希望者の方が多くなります。テレワークが現実的選択肢となりづらい背景には、仕事と通勤をセットで考えてしまうこと以外に、テレワークを取り巻く6つの原因があるのではないかと考えます。

①テレワークに適した業務設計が不十分

②テレワークできる社内ルールの整備が不十分

③テレワークできる設備が不十分

④テレワーク勤務者の事例が少ない

⑤在宅の場合、仕事と家庭のオン・オフがつけづらい

⑥販売やサービス職などテレワークを導入しづらい職務がある

最後に挙げた「テレワークを導入しづらい職務」に就いている人は、ロボットの遠隔操作などが実用化されない限り、職場への通勤が必要です。どれだけテレワークを推進しても、通勤する人がゼロになるようなことは、すぐには起こらないと考えます。

しかしだからこそ、テレワークで働く人を増やして通勤する人の総数を減らすことには意味があるとも言えます。その分、通勤混雑の度合いを緩和できるからです。テレワークの推進は、テレワークしたい人にも、通勤する人にも、どちらにもメリットがあります。

東京オリンピック開催まで、残り一年弱。総務省の資料によると、テレワークの企業導入率はアメリカ85.0%に対して、日本は13.9%です。大きな差がありますが、この数字の差は、日本が今よりもっと働きやすい国になれる可能性の大きさを表しているとも言えるのではないでしょうか。

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