心の故郷となる場に 92代目阿蘇神社宮司・阿蘇惟邑さん

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 ◇あそ・これくに 1988年、阿蘇市生まれ。阿蘇高-皇学館大(三重県)卒。熱田神宮(名古屋市)や八幡朝見神社(別府市)での修行を経て、19年7月15日付で神社本庁から阿蘇神社宮司の辞令を受けた。休日は趣味のテニスやドライブをして過ごす。

 「肥後国一の宮」として2千年以上の歴史を持ち、全国に約500社の分社がある阿蘇神社(熊本県阿蘇市)の第92代宮司に7月就任した阿蘇惟邑[これくに]さん(31)に、意気込みや、楼門など社殿が甚大な被害を受けた熊本地震からの復旧への思いを聞いた。(中尾有希)

 -30代での就任は、旧官幣大社に当たる神社の中ではかなり若いそうですね。

 「宮司職は代々、阿蘇家直系の長男が継いできた。先代の父が7年前に60歳で亡くなり、本来なら私がすぐに継ぐところを、神職に就いて1年もたたない時期だったこともあり、叔父がしばらく宮司の仕事を担ってくれた。その間に経験を積み、昨年までの3年間は別府市の八幡朝見神社で修行して、祭事や神社の運営を学ぶこともできた」

 「祭りに奉仕する父の姿を見て育ち、自分も継ぎたいと思うようになった。就任後は、御田祭、田実祭[たのみさい]と、宮司としては初めての神事が続き、職責の重さを実感している。父がいかに地域で慕われていたかも分かった。目指すべき姿だと思う」

 -地震では甚大な被害を受けました。

 「火災による建て直しは記録にあるが、地震によるこれだけ大きな被害は類を見ないだろう。倒壊した様子を見たときは、悲しみと同時に、自分の代で一日も早い再建に尽くさねばという気持ちが湧いた。多くの皆さまの温かい支援で、8月末には全壊した楼門と拝殿の着工を迎えることができた」

 「大きな社殿は再建のめどが立った一方、鳥居や御仮屋、授与所など修復が必要な場所はまだ残っており、寄付金を募っている。地域と協力しながら取り組んでいきたい」

 -92代目としての意気込みは。

 「先祖代々受け継いできた歴史や建物、地域とのつながりを絶やすことなく、後世に残すことが使命。神社がもとの姿に戻るよう力を尽くし、一度訪れた人が何度も参拝したいと思えるような、多くの人にとっての心の故郷となる場にしたい」

(2019年9月25日付 熊本日日新聞朝刊掲載)