「人権や尊厳の侵害」 横浜高校野球部の暴言、暴力に識者

横浜高校長浜グラウンドで集まる野球部員=横浜市金沢区の横浜高校長浜グラウンド

 全国屈指の名門・横浜高校野球部で暴言、暴力が繰り返されていると、部員たちから悲鳴が上がっている。暴言や暴力に加え、不条理な謹慎処分も下されていたという。識者は「暴力や暴言は部員たちの人権、尊厳を傷つける言動で、到底看過できるものではない」と断じている。

 スポーツ倫理学が専門で、部活での体罰やハラスメントに詳しい早稲田大の友添秀則教授は「暴力は当然許されない。それが言葉による威圧や脅しでも、受けた子どもたちの心の傷は深い」と話す。

 「体罰は許されない」という認識が浸透したことで近年は殴る蹴るという事案は減っているという。「その一方で、言葉での人権侵害は許される、という勝手な解釈がまかり通っているのではないか」と友添教授は強調する。部活も、社会的に許容される常識が通用しなければならないと話す。

 子どもの権利に詳しい藤田香織弁護士は、法的な判断について「一般的に『死ね』『殺すぞ』『クビだ』という発言は脅迫罪になる可能性がある。首を絞めたり、胸を突き飛ばしたりする行為は暴行罪、その上、傷を負わせれば傷害罪に問われる恐れがある」と指摘する。刑事上も民事上も、また学校側から懲戒処分を受けかねない重たいものだとみる。

 また、複数の部員の証言によると、ある部員は、学校での授業中の態度が悪かったり、数人で騒いでいたことなどを理由に、責任教師の金子雅部長から謹慎処分を受け、4月以降3カ月間、練習への参加が許されなかったという。これについて金子部長は「直近の1年間で謹慎中の部員はいない」と否定している。この部員は7月に1度復帰したものの、その後、学校からグラウンドへの道順についてルールと異なる道を数人の部員と歩いていたことを理由に、その部員だけが追加で1カ月間の謹慎処分となったという。

 また別の1年生部員は今月、金子部長から名前を呼ばれたものの、返事が遅れたことを理由に1カ月間、練習時間(1日約5時間)のほぼ全て、草むしりや部室の掃除をするよう命じられたという。

 友添教授は「学校での部活が教育の一環であるということを忘れてはならない」とくぎを刺す。不条理な謹慎処分があった場合、「懲戒権の乱用ではないか。指導者と選手との間で合意が成立していなければ謹慎は意味をなさない」と話す。

 藤田弁護士も「謹慎処分は、その『理由の合理性』と『処分の平等性』の両方が満たされなければならない。同じ行為をやった部員に同じ処分を下しているのだろうか。授業中の態度が悪いから練習に来させないというのは、合理性があるとは思えない」と疑義を呈している。

© 株式会社神奈川新聞社