跳ね上げ式? 横開き? はたまた観音式? 便利なリアゲート5選

スズキ 新型ジムニー XC(5MT) ボディカラー:キネティックイエロー

多種多様なリアゲート…おすすめ5選を自動車マニアに聞いてみた!

クルマの売れ筋がセダンからハッチバックやワゴンに、そしてミニバン、SUVへと移ってきました。純粋な4ドアセダンとの大きな違いは、「5枚目のドア」、つまりリアゲートの存在です。バックドア、テールゲートなどさまざまな呼び名があるこのドアは、車種によって開き方もいろいろあります。

リアゲートを備えたクルマは、大きな荷物の出し入れも容易なため、古くから商用バンやステーションワゴンに採用されてきました。その後、1961年の「ルノー 4」や、1974年の「フォルクスワーゲン ゴルフ(初代)」などの乗用車がリアゲートを備えて登場したことで、数多くのクルマに普及しました。

そのため、ひとえにリアゲートと言ってもいろいろな「開き方」があります。そこで、今回は「代表的なリアゲート5種」をメリット・デメリットとともにお届けしたいと思います。

その1:雨宿りもできちゃうリアゲートの代表格、「跳ね上げ式」

トヨタ アルファード ハイブリッド エグゼクティブ ラウンジ[E-Four(4WD)/7人乗り]

バン、ステーションワゴン、ミニバン、SUVなど各車で採用される標準的なリアゲートが跳ね上げ式。特に日本車では、「トヨタ ダイナルートバン」など一部を除き、車種の大小に関わらず、ほぼ跳ね上げ式といっても良いほどです。代表的な車種は、「トヨタ ハイエース」「トヨタ アルファード/ヴェルファイア」などです。

メリット

・左右にドアの開閉機構がなくなるので開口幅が目一杯取れる

・開くと屋根代わりにもなるので、雨天時は雨宿りもできるし、荷物も濡らさずに出し入れできる

デメリット

・クルマの後ろにドアを開くためのスペースが大きく必要

・手動式の場合、開いた後ドアが高い位置にあるため、小柄なユーザーだと開閉しづらい

・開くと、途中で止めにくい

・小さな荷物の出し入れでも、ほぼ開き切る必要がある

跳ね上げ式のデメリットに対する改善策として、跳ね上げ式リアゲートのガラス部分だけを開閉可能にしたクルマも存在します。「日産 セレナ」などが代表例です。

その2:狭いスペースでも開閉可能で、慣れると便利!「観音開き式」

カングー

続いては、センターで分割して左右に開く「観音開き」。商用車ベースの乗用モデル「ルノー カングー」が採用していることで、日本でもおなじみになりました。

欧州ではカングーに跳ね上げ式も選ぶことができますし、初代カングーの初期型も跳ね上げ式で輸入されていましたが、現在日本では観音開きのみ購入可能。カングーを買う理由の一つにあげられるほどの人気を誇っています。

メリット

・全開でも開閉スペースをあまり取らずに開閉可能

・ちょっと荷物した荷物なら、少しだけ開けて取ることができる

・片側だけ開けて取ることもできる

・軽い力で開閉ができる

デメリット

・風が強い日は、影響を受けやすい

・雨が上から吹き込みやすい

・全開するとき、手間がかかる

・センターに柱ができてしまうので、視界の一部を遮ってしまう

カングーを再び例に取ると、愛犬家にカングーユーザーが多い理由に「犬をリアゲートから降ろすとき、ゲートの開閉量を調整できるので、犬が外に飛び出しにくい」ことがあると聞きます。確かにこれは大きなメリットかもしれません。

その3:座って海を眺めたい!? 「上下2分割式」

BMW 新型「X5」発表

ガラス部分が跳ね上げ式で、ボディ部分が手前に開く上下2分割式リアゲートは、古くからバンやステーションワゴンに採用されてきた伝統あるリアゲートの一つです。

過去の車で代表的な例では、古い車では1960年代の軽ボンネットバン(ダイハツ ハイゼット/フェロー、マツダB360、コニーなど)に数多く採用していたことが思い出されます。現行車種では、「トヨタ ランドクルーザー(200系)」や、伝統的に上下2分割リアゲートを採用する「BMW X5」「ランドローバー レンジローバー 」などが備えています。

メリット

・全開でも開閉スペースをあまり取らずに開閉可能

・ちょっと荷物した荷物なら、ガラス部だけ開けて取ることができる

・ガラス部を開けると、少しだが雨よけになる

・下側ゲートに座ることもできる ちょっとしたテーブルや作業台にも早変わり

デメリット

・下側ゲートが手前に来るので、ラゲッジスペース奥の荷物が取りにくい

何と言っても「座れる」ことに憧れてしまいます。SUVで海岸の駐車場に行き、ゲートに座って海を眺めたら素敵だな……なんて妄想も捗ってしまいそう!?

その4:SUVの採用例が多い「横開き式」

スズキ 新型ジムニー XC(5MT) ボディカラー:キネティックイエロー

「横開き式」は、片側を支点に、片側開きドア式冷蔵庫のようにリアゲートが開くタイプ。一般的な乗用モデルの採用例は「日産 キューブ」、5代目までの「ダイハツ ムーブ」、「三菱 ミニカトッポ」など数えるほどしかないのですが、「スズキ ジムニー」をはじめとした本格派SUV(RV)では横開き式が多く用いられています。

一昔前にラインナップされていたRVの多くも、ほとんどが横開き式でした。その理由は、スペアタイヤを背中に背負っているため。重量物である大きなタイヤとホイールを装着したリアゲートを跳ね上げ式にすると、開閉時の力が必要になってしまいます。横開き式では少しだけ開けることもできるため、開閉の場所を選ばないメリットもあるかと思います。

メリット

・全開でも開閉スペースをあまり取らずに開閉可能

・ちょっと荷物した荷物なら、少しだけ開いて取り出すことができる

・軽い力で開閉ができる

デメリット

・ヒンジ側からのアクセス性に難あり

・風が強い日は、影響を受けやすい

・雨が上から吹き込みやすい

その5:さらに高い機能性を感じる「上下2分割+横開き式」

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

最後は、「横開き式」にさらに上下分割が備わった「上下2分割+横開き式」を選んでみました。「ジープ ラングラー」や、「ホンダ CR-V(初代)」などで採用されています。ガラス部と下段ゲートが完全に分割されているタイプです。

小さな荷物や小物は、ガラスを跳ね上げてバンバン放り込み、大きな荷物があるときは横に開閉。横開き式なのは、前述の通り大きなスペアタイヤを装着しているためです。このように機能が仕様や設計を決めているため、横開き式よりもさらに高い機能性を感じさせてくれます。

メリット

・全開でも開閉スペースをあまり取らずに開閉可能

・ちょっと荷物した荷物なら、ガラス部だけ開けて取ることができる

・ガラス部を開けると、少しだが雨よけになる

・軽い力で開閉ができる

デメリット

・ヒンジ側からのアクセス性に難あり

・風が強い日は、影響を受けやすい

なお、「トヨタ ランドクルーザー プラド」「トヨタ FJクルーザー」「ホンダ CR-V(2代目)」などは横開き式でさらにガラス部分が開閉できますが、ドア自体は“1枚もの”なのでここには含まれず、今回の分類法では「横開き式」になります。また「日産 セドリックバン(初代)」のように、横開き式でガラスが下段ゲートに電動格納されるタイプは、こちらも単純に「横開き式」に分けられるかと思います。

使い勝手はそれぞれだけど、共通しているのは「利便性」

今回分類や参考例としてあげた以外にも、「ホンダ ステップワゴン」が採用する、「跳ね上げ式+横開き式」という凝った構造の“いいとこ取り”な「ワクワクゲート」などもあり(これを“その5”にしようかとも考えました)、リアゲート一つとってもバリエーションの多さが伺えます。

どのタイプにもメリット・デメリットがあり、車種によっては選べないこともあって、一概にどれが良いかと決めにくいのは確かですが、共通しているのは言うまでもなくリアゲートがあるクルマの「高い利便性」。

リアゲートにたくさん種類があるのも、その使い勝手を追求し続けてきた結果なのだと思います。リアゲートの重さに関しては電動化で解決しつつあるように、今後もリアゲートは進化を続けていくことでしょう。

[筆者:遠藤 イヅル]

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