北朝鮮の台風13号被災地で伝染病が拡散

今月7日、北朝鮮の黄海南道(ファンヘナムド)に上陸した台風13号(レンレン)により、現地で大きな被害が出ている。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋は、遠く離れた平安北道(ピョンアンブクト)も強風と豪雨に見舞われ、農作物に被害が出ていると伝えた。

また、国連軍司令部は19日、ツイッターで、南北を分断する軍事境界線上に立つ板門店の合同警備区域の建物が台風による被害を受け、南北の兵士が合同で修理する様子を写した写真を公開した。

当局は「復旧に力を入れよ」と強調しているものの、被災地に一切の支援は行っておらず、現地の情報筋によると、タバコ農場に向かう主要道路が破壊され、収穫されたタバコの葉を乾燥する機械への石炭供給が遅れ、中学生までが動員され石炭を運ぶ作業を強いられている。


一方、被災地では細菌性の下痢、腸チフス、パラチフスなどの伝染病が蔓延し、死者が発生していると、黄海南道のデイリーNKの内部情報筋が伝えた。

被災地は断水が続いており、被災者は水たまりや川の水を飲んだり、水害で汚染された食品を食べたりして様々な伝染病に感染している。下痢、高熱、皮膚病など様々な病気が広がっているが、「遺体を見たがとても直視できなかった。ガリガリの遺体を見て、(1990年代後半の大飢饉の)苦難の行軍を思い出した」(情報筋)とのことだ。これは、穀倉地帯である黄海南道でも食糧が不足し、抵抗力が弱り、少しの病気でも命取りになっているということだ。

また、患者の治療、感染拡大の防止など、防疫体制も整っていない。

復旧がままならない中で、もう一つの台風が朝鮮半島を襲った。

台風17号(ターファー)が22日午後から夜にかけて対馬海峡を縦断し、韓国南部から、北朝鮮に面した江原道(カンウォンド)にかけて、強風と大雨による被害が続出した。北朝鮮からの被災情報は伝えられていないが、何らかの被害が発生している可能性がある。

また韓国メディアは、軍事境界線付近で発生したアフリカ豚コレラに対応するために散布された薬剤が、台風の雨風により効果が薄れることが懸念されると報じている。また、ウイルスに感染したイノシシが、増水した川に流され、韓国にさらに汚染が広がることも懸念されている。

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