負うた子に教えられ

 負うた子に教えられて浅瀬を渡る-。国連本部で開かれた気候行動サミットはまさに、このことわざのごとき場面となったのではないか▲開幕式でスウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリさんが演説し、温暖化対策の遅れを語気を強めて批判した。「私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金と永遠の経済成長というおとぎ話だけ」▲トゥンベリさんは昨夏、温暖化対策の強化を求めて毎週金曜日に学校を休み、国会前での座り込みを始めた。この抗議行動は瞬く間に共感を呼び、世界に広まった▲サミット前に行われた若者らによる一斉抗議行動には世界で400万人以上が参加した。温暖化による異常気象、自然災害が続発する状況に、次世代がどれほどの危機感を抱いているのかを知らしめた▲サミットでは77カ国が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする長期目標を掲げたが、米国や日本は加わらなかった。トゥンベリさんは「全ての未来世代の目があなたたちに注がれている。私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない」と涙をにじませ各国首脳に迫った▲背中におぶられた子は親の上から、川の浅い深いをよく見分けることができる。子どもの訴えに、具体的な行動をもって応える、大人の責任が問われている。(久)

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