去年の悔し涙を糧に―西武今井に芽生えたエースの自覚「大事な試合で勝ちたい」

西武・今井達也【写真:荒川祐史】

昨年のCSファイナル第4戦で5回途中4失点で敗戦投手 悔し涙を流した

 リーグ2連覇を果たした西武ライオンズ。昨年は10年ぶりにパ・リーグ制覇を成し遂げたが、クライマックスステージ(CS)ファイナルステージで惜しくも敗退。試合後のセレモニーでは、辻発彦監督が号泣しながらファンへの挨拶を行った。そんな指揮官の後ろで悔し涙を流していたのは、今井達也投手だった。

 今井は2勝2敗(アドバンテージ含む)で迎えたクライマックスステージ(CS)ファイナルステージ第4戦に先発。4回2/3を投げ4失点。敗戦投手となった。

「シーズン途中から先発で投げさせてもらっていて、年上の先発ピッチャーの方がいる中で、自分がCSで投げさせてもらいました。それなのに勝てなかった。申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。そんな気持ちの中、監督の話を聞いているうちに、感極まってしまいました。本当に悔しいなと……」

 今シーズンはシーズン中盤から3連戦の初戦を任されるなど、首脳陣からの期待も大きい。その期待に応えるべく活躍を誓ったシーズンだったが、ここまで7勝9敗、防御率4.32。自身が「背番号くらい勝ちたい」と目標に掲げていた2桁勝利は達成できなかった。

「3連戦の初戦は勝って勢いをつけたいところですが、そこでなかなかゲームが作れていない。僕自身も納得できていません。フォアボールが多い分、腕が振れなくなり、ストライクを取りにいってしまいます。置きにいったボールもストライクが取れず、結局フォアボールになる。西口コーチ、小野コーチには、自分のいいところは思いっきり腕を振って強い真っ直ぐが投げられるところだと言われています。フォアボールを怖がって、腕が振れないと長所がなくなる。そこを直していかないといけないと思います」

今季は7勝9敗、防御率4.29「先発で1番若いので頑張っていきたい」母校・作新学院からも刺激

 登板の翌日には、西口文也投手コーチから指導を受けている。指摘される部分は納得することばかりで、課題を修正して後悔のない投球がしたいと話す。

「『あそこでああだったらな』『そこだったな』というのが多いです。そこを修正していかないといけないと思います。試合を作るのは先発の仕事です。更に勝っていかなければ評価はされない。まだまだやり足りないというか、悔しい思いのほうが多い。チームの力になり切れていないと思います」

 シーズン終盤になり疲れも出てくる時期だが「先発で1番若いので頑張っていきたい」と気を吐く。この夏、母校の作新学院高は甲子園ベスト8入りし、後輩たちの姿にも力をもらった。

「惜しいところまでいきましたね。打つ方は問題ないと思っていたんですが、エースの林君は準々決勝、準決勝が一番辛かったと思う。自分も準々決勝終盤あたりから、準決勝が一番辛かった。あそこを踏ん張れば行けたんじゃないかなと思います」

 今季、再びCSでの登板は十分に考えられるが「大事な試合で勝ちたい」と、昨年のリベンジを誓う。

「ここまでは同じ失敗を繰り返しています。森さんにも、打ってもらっている打線にも迷惑をかけている。大事な試合に勝てるのがエースだと思います。負けられない試合を勝ち切らないといけないと思います」

 甲子園制覇はわずか3年前だが、既にライオンズのエースとしての自覚を持って戦っている。頼もしい21歳の右腕は、悔し涙を流した昨シーズンの経験を糧にチームを悲願の日本一に導く。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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