ジョンソン英首相、議会での言葉遣い批判に反論

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25日に審議を再開した英下院での、ボリス・ジョンソン首相の発言に批判が集まっている。ジョンソン首相は議会で、議員への脅迫に懸念を示した女性議員の発言を「たわけた話」と退けたが、BBCの取材では、「あらゆる人物、特に女性議員への脅迫を激しく非難する」と自身の立場を擁護した。

また、議会では「あまり怒りをあらわにすべきではない、みんなもっと落ち着く必要がある」と話した。

英議会は25日、首相による議会閉会は違法だという最高裁判決にもとづいて審議を再開した。

しかし、ジョンソン首相は再開後の演説で「最高裁は間違っている」と発言。また、欧州連合(EU)からの合意なし離脱を回避する通称「ベン法」を「降伏法」と呼ぶなど扇動的な言葉を多用し、野党側から大きな批判を浴びた。

BBCのニナ・ウォーハースト政治編集長(イングランド北西部担当)による取材でジョンソン氏は、「あらゆる人物、特に女性議員への脅迫を激しく非難する。脅迫を止めるためにさまざまな手段を講じているし、必要な保護を提供している」と話した。

一方で、「下院では降伏法について、私が話したいように話せるようになってほしい」と述べ、野党が批判している「降伏」という表現を使い続けた。

ジョンソン氏は、この法律は「この政権から力を、EUにあとどれだけ残留するかを決める力を奪い、その力をEUに与える、非常におかしな法律だ」と、「降伏」という表現の理由を説明した。


ベン法とは?

ジョンソン氏が「降伏法」と呼んでいるのは、ヒラリー・ベン議員が中心となって提出し、9月初めに成立した「欧州連合(離脱)(第2)法」のこと。

この法律は、首相は10月19日までに離脱協定の議会承認を得るか、下院から合意なし離脱の承認を取り付けなくてはならないと定めている。

それができなかった場合、首相は離脱期限を10月31日から2020年1月31日まで延期するよう、EUに要請することが義務付けられており、合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)を阻止する内容となっている。

もしEUが別の期日を指定した場合、首相は2日以内にこの提案を受け入れなくてはならない。しかし、この2日間にEUからの提案を拒否できるのは政府ではなく下院議員だと定められた。


「言葉遣い」を審議

下院は26日、前日の敵意に満ちた審議での「言葉遣い」を、緊急質問として審議した。

ジョン・バーコウ下院議長は審議が始まる前、全党派の下院議員に対して言葉遣いに気をつけるよう、そして「お互いを敵ではなく、反対勢力として扱うよう」求めた。

しかし、その後も審議は白熱した。ジョンソン氏に対しては複数の議員から、EU離脱をめぐる国民投票の期間中に殺害されたジョー・コックス議員(労働党、EU残留派)をめぐる発言について謝罪するべきだとの声があがった。

ジョンソン氏は25日、議員への脅迫についての質問で名前の挙がった故コックス議員について、「追悼するには何より(中略)ブレグジットを実現することが一番の方法だと思う」と答えていた。

労働党のジェス・フィリップス議員は、謝罪の言葉を口にするのがジョンソン氏ができる「もっとも勇敢なこと」だと指摘した。

キャット・スミス影の下院院内総務は、25日の議会での言葉遣いを、暴力的な歌詞が特徴のラップ「ドリル・ミュージック」に例えた。

「政治家自身が暴力的な言葉遣いや、そうした物言いが審議の文化や風潮に与える影響に責任をもてなければ、暴力を称賛するドリル・ミュージックのアーティストを批判することなどできないのではないか」

このほか、議員たちは自分が実際にどういう脅迫を受けているか、詳細を述べた。キャロライン・ノークス議員(保守党)は、選挙区内を視察している時に「銃で撃たれるべき裏切り者」と呼ばれたことがあると話した。

また、下院議員歴が最長のケン・クラーク元財務相とハリエット・ハーマン議員からは、議長委員会で議員への脅迫について協議すべきだと発言した。議長委員会は2008年に新設された委員会で、下院内の女性や民族的少数派、障害者が抱える諸問題について協議する。

首相の妹も批判

ジョンソン首相をめぐっては、妹で著述業のレイチェル・ジョンソン氏も批判している。レイチェル氏はBBCのラジオ番組で、首相は下院を「bully pulpit(思い通りに発言できる権力の座)」だと思っていると話した。

レイチェル氏は親EU派で、6月の欧州議会選挙では「変化のための独立グループ」として立候補した。レイチェル氏は下院での主将について、「家で目にする兄ではない。全く違う人物だ」と評した。

また、サー・ジョン・メイジャー元首相(保守党)は、ジョンソン首相が総選挙を早く実施したがっていることについて、ブレグジットの危機は「総選挙では何も解決しない」と批判した。

サー・ジョンは、総選挙は「現在の幻滅感や不和を加速させるだけだ」と指摘。さらに、政府がベン法の発動を回避するために、施行を10月31日以降に先延ばしにするのではないかと懸念を示した。

サー・ジョンによると、政府が女王の裁可を介さない枢密院令を使って、ベン法を回避する方法を模索しているという。

「もしこの道筋を取るなら、それは下院への凶悪な挑戦であり、最高裁への侮辱そのものになるということを首相に警告したい」

カミングス顧問、国民の怒りには「驚かない」

ジョンソン首相の顧問を務めるドミニク・カミングス氏は26日夜、ブレグジットをめぐって一部の有権者が怒っていることには「驚かない」と話した。

「下院議員は国民投票をやります、結果を尊重しますと言っておきながら、それから3年間ひたすらどたばたを繰り返している。議会は(国民投票の)結果を尊重すると約束したはずだ。最終的にはその約束を守らなければ、事態は解決できないだろう」

カミングス氏は、2016年の国民投票ではEU離脱派のキャンペーンを取り仕切っていた。

現在の首相官邸の様子については、「国民投票に比べればたやすいもの」で、官邸内は落ち着いていると表現した。

(英語記事 Johnson defends language after criticism from MPs