ジープ 新型ラングラー イタリア試乗|山まるごとのワイルドテストコースを走り倒す!

©オートックワン株式会社

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

自然と共存するジープならではのイベントを体験!

日本のオフロード試乗会ではお預けされたJeep(ジープ)の走破性テストを、なんとイタリアのリゾート地でこれでもかというほど味わうことになったのだから、人生とは不思議なものだ。

これはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が、イタリア北部トレンティーノ アルト・アディジェ州にある「サンマルティーノ・ディ・カストロッツァ」というリゾートで開催したイベント「キャンプ・ジープ」に筆者が参加したから。正確に言うと週末約700台のジープとそのオーナーたちが集まるイベントのアトラクションステージを借りて、ジープの走破性をテストしたのであった。

ご存じの通りジープは現在、クライスラーを傘下に収めたフィアットで販売されている。だからそのお膝元となるイタリアでは、コンパクトSUVであるレネゲードがあちらこちらで走り回り、ミラノの街中ではラングラーに乗ったお洒落なミラネーゼが得意げに、歴史ある石畳をアーバンクルーズしている光景が多々見られた。

ちなみにFCAが力を入れてから欧州におけるジープブランドは急激な躍進を見せ、昨年は前年比で+73%の成長率を誇った。またドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、イギリスの順に売れているのだという。

つまりジープは、ヨーロッパでは今が旬。それだけに大規模なイベントが毎年、FCA主導で開催されているのである。

とはいえ本当にその規模には驚かされた。

特設ステージにはリジッドアクスルの足つき性が確認できる丸太越えや、登坂性能をテストする巨大なやぐら等々手の込んだアトラクションが用意されていたが、何より圧巻だったのは周辺の山を丸ごと借り切って走行ステージとしていたことである。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

ただしそれは、単なるイベントではなかった。なんでもこの地域では筆者が訪れる前に大規模な台風被害があり、FCAが倒れた木々等を取り除くなど復旧に貢献したというのだ。前述したアトラクションや会場に敷き詰められたウッドチップはこうして集められた木材で作った。だからこそ山を管理する林業の人々も、普段はハイカーにしか開放しない山道を、FCAに解放したのだという。

自然と共存するジープのイメージと相応しいエピソードである。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

細かい注意は一切なし! それでも走れるのがルビコンの実力

さてそんなわけで筆者はいきなり本格的な林道を走らされることになったわけだが、このコースがまたビギナーには強烈だった。

今回試乗したのは、ジープ・ラングラーの中で最もハイパフォーマンスなオフロード性能を誇るアンリミテッド・ルビコン。日本には存在しない2リッターガソリン直列4気筒ターボ(272PS)との組み合わせで2/4ドアモデルを試し、さらには2.2リッターディーゼル直噴ターボ(144KW:200PS相当)の4ドアにも試乗することができた。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0
ジープ ラングラー ルビコン 2.2ディーゼル2

ルビコンだけが入ることを許された山林の入り口には、陽気なイタリアンがひとり。彼はR(アール)を巻き舌で発音しながら、にこやかに挨拶をしてきた。そして最後に副変速機のギアを『4L(4WDのローギアだ)に入れてね』、とだけアドバイスをくれた。

……それだけ? もう走っていいの?

『そうだよ!』

「危ないから飛ばさないでね」とか「くれぐれも事故には注意して」なんていう前置きはまったくない。そして目の前の極めて細い林道の急な上り坂を、さぁ登れというのである。

果たしてジープには、そのむちゃぶりを担保するだけの能力が備わっていた。

特に第二世代のマルチジェットエンジンである2.2リッターディーゼルターボの粘りは、ジープのオフロード性能と高い親和性を見せた。

ガソリンモデルではやや踏み込み気味にトラクションを稼ぐ場面でも、ディーゼルターボはつま先に僅かな力を込めるだけで乗り越える。8速ATとスーパーローギアードな副変速機の組み合わせにより微細なアクセラレーションが可能となるから、力強く繊細に、ぬかるみやモーグルを走破して行けるのだ。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

ただコースに慣れてくると、低速トルクが少ない分アクセルを踏み込む、ガソリンモデルの思い切った運転も面白くなってくる。足つきのよいサスペンションと、強固なラダーフレームシャシーの走破性があれば、ガソリンモデルでも十分にオフローダーとしての性能を堪能することができた。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

機動性抜群の2ドアラングラー

ボディタイプでは、2ドアモデルの機動性には嬉しくなった。

結果的には十分な広さを持つが、悪路での見切りや見晴らしの良さに主眼を置いたコクピット。それに加えて2459mmのショートホイルベース(4ドアは3008mm)が、ジープとしての回頭性を引き上げる。圧巻だったのは4ドアモデルだと切り返しが必要になるタイトターンで、山側の斜面に前輪を乗せてこれをクリアしてしまったことだ。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0
ジープ ラングラー ルビコン 2.0

急な下り坂にはヒルディセントコントロール。段差が激しい路面でスウェイバー(一般的にいうとスタビライザー)のスイッチをオフにすれば、フロントサスペンションの自由度はさらに高まり、デコボコした傾斜でも姿勢を保つ。

様々なモード使いこなして悪路を走破する様は、まさにアドベンチャー。林道を上りきってダートロードに出ると、自ずと右足に力が入った。

悪路でのキックバックを防ぎ、高い耐久性を誇るボールナット式ステアリング。おっとりとしたそのステアリングレスポンスにも慣れてくると、これとロングストロークなサスペンションが織りなす独特なモーションを先読みしながらガンガン走れるようになる。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

ときおり4輪が滑りながらも慌てずに、微妙な修正舵とトラクションで安定を保つ。

まるでラリーのような走りに嬉々としていた筆者だったが、ふと助手席側の景色を見て心臓が飛び出しそうになった。

……断崖絶壁じゃないか!

落ちたら間違いなく、ただじゃすまない。そんなコースを、先導もなしにフリーランさせるイタリアの大らかさ。

自己管理、オウンリスクが当たり前の国だからこそ、クルマが持つ魅力をしっかりと評価できる。それを痛切に感じた試乗だった。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

悪路走破性とオンロードの快適性を備えるラングラー

このコースを何度もお代わりしたことで、逆にオンロードでは最新ジープが持つ快適性の高さも理解することができた。この穏やかなハンドリングや、意外とよい乗り心地に快活さをも与え、デイユースでの扱いやすさを上乗せした立役者は、エンジンと8速ATである。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0

ジープのキャラクターを100%活かすなら、2.2リッターディーゼルターボは抜群の相性を持っている。しかしオンロード性能だけで言うと、2リッターガソリン直噴ターボがもたらす高回転でのパンチ力がジープにキビキビ感を与えていると気づく。

最大トルクはディーゼルの450Nmに比べ400Nmとやや劣るが、転がり出しがスムーズなアスファルトだとこれがさほどデメリットには感じられない。8速ATのギア比を駆使してダッシュを決めれば、十分低中速トルクは確保できる。

そして高回転での伸び感が、高速クルージングでの快適性や追い越し加速で威力を発揮する。だから「これなら普段使いしてもいいな」という印象が強くなるのだ。

さらに日本仕様の2リッターターボモデル(アンリミテッドスポーツ/アンリミテッドサハラ)には、「セルフトラック」と呼ばれるセンターデフが装備される。これでいちいち副変速機を切り替えなくても、4WDのままクルマ側が前後のトルクを走りやすく配分してくれるようになる。

ジープ ラングラー ルビコン 2.0
ジープ ラングラー ルビコン 2.0

LEDタイプとなったヘッドライト。ガジェット感が強くGショックのような若々しさとタフさを感じさせるインパネのナビやスイッチ類。

そして高い日常性能が備わるようになった今こそ、ジープに乗るべきときだと私は思う。

日本はもちろん、イタリアだって、そして本場のアメリカだって、日常でジープの性能をフルに発揮できるステージなどは存在しない。

しかしジープは本物の性能を備えているからこそ、高いファッション性を発揮するのだ。それは機械式時計が使いもしない高性能なクロノグラフ機構を備え、Gショックが極限下での使用に耐えうるタフネスを持っていることと似ている。

いつの時代も私たちの心をワクワクさせるのは、本物の性能なのだ。

[筆者:山田 弘樹/写真:FCAジャパン]