がん乗り越え栄冠 中嶋プロ長女・県アマゴルフ人見さん

ミッド女子の部で優勝し笑顔の人見佳乃さん=戸塚CC

 27日に戸塚カントリー倶楽部(横浜市旭区)で行われた県アマチュアゴルフ選手権。ミッド女子(30歳以上)の部で、名ゴルファー中嶋常幸プロ(64)の長女、人見佳乃さん(40)=横浜市中区在住=が初優勝を飾った。子宮がんを乗り越えた2児の母は、今月から18年ぶりに競技復帰し、「数年前には考えられなかった。やっぱりゴルフからは離れられない」と笑みをはじけさせた。

 父親譲りの腕前はブランクを感じさせない。パワフルなドライバーで距離を稼ぎ、緻密なパターがさえた。前半をパープレーで回り、トータル76にまとめて、女王に輝いた。

 中嶋家の長女として生まれた。自然とクラブを握り、頂点を極める父の背中を追ったが「上を目指す戦いには終わりがない」。プロの道を諦め、2003年に結婚。翌年には愛さんが生まれ、クラブを置いた。

 第2子の長男・慈有くんの命を宿した10年。がん検査で子宮頸(けい)がんが発覚した。医師の言葉に、絶望の淵に立たされた。

 「おなかの赤ちゃんは助かりません」。泣きはらしたが、やはり母は強かった。自らの命以上におなかの中のわが子を案じ「授かった命は絶対に守る」。リスク覚悟で、出産前にがん切除の手術を受ける。そこから数カ月後、慈有くんが無事に誕生した。

 産後は半年間、リハビリのため寝たきりの生活を送り「しゃがむと立ち上がれないほど」(人見さん)筋力は低下した。子育てにも没頭し、競技から一層遠のいた。

 ただ、2人の子どもたちが再び導いてくれた。ゴルフに興味を持ち、手取り足取り教えると「アプローチくらいなら、やってみようかな」。ゴルフ熱は一気に再燃。家族そろってゴルフに浸る日々に、2人の孫に囲まれた常幸プロは「こんな幸せってあるんだね」と目尻を下げるという。

 大会は4人1組でコースを回る。ともに戦う同世代の女性たちに、伝えていきたいことがある。「がん検診を受ける機会があれば迷わず受けて。いかに早く見つけられるかが大事。自分一人のものじゃない命を大切にしてほしい」

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