LGBTの人も使える死亡保険が増、でもやっぱり不利?生命保険料控除や相続税はどうなるか

死亡保険で保険金の受取人に指定できるのは、「戸籍上の配偶者、または2親等以内の血族」です。生命保険の受取人はだれでも指定できるわけではありません。それはなぜかというと生命保険を利用した犯罪やモラルリスクのために決められているのです。

では、内縁の妻(事実婚)という場合は、生命保険の契約はどうなるのでしょうか? また、同性パートナー(LGBTの方)は、生命保険を利用することができるのでしょうか?

今回は、性的マイノリティーであるLGBTの方が保険を利用するときのお話しをしてみましょう。


内縁の妻を保険の受取人に指定した場合

内縁関係にあるカップルは、事実上では婚姻関係なのですが、婚姻届を提出していないので、法律上は夫婦として認められません。ですから相続が発生した時には当然不利になります。

生命保険でも、死亡保険金の受取人には原則としてはなれません。配偶者、親族以外が受取人の場合、保険会社から問い合わせがきます。ネットで申し込んだとしても同様です。まず担当者から連絡があり、面談で申し込み内容の確認があります。

そして契約ができるかどうかは、保険会社によって違ってきます。

同性パートナーを受取人にした場合

では、LGBTの場合には、どうでしょうか。LGBTとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)の略で性的マイノリティーを指す言葉です。

実際にLGBTの方はどのくらいいるのでしょう。電通の「電通ダイバーシティ・ラボ」の調査よると全体の7.6%の人がLGBTに当たるそうです。これは日本人の左利きが占める割合とほぼ同じくらいです。

最近、ダイバーシティ(多様化)がクローズアップされるようになり、生命保険会社も「同性パートナー」を生命保険の受取人に指定できるようになってきました。

ライフネット生命、アクサ生命、オリックス生命、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命など、約半数近くは認められるようになってきています。

保険に入ることはできるけれど、やはり不利は変わらない

以前に比べてLGBTの方が、生命保険に入るのは、かなり門戸が開かれて、ハードルが低くなりました。とはいっても、不利なことはまだまだあります。

たとえば、一般的に使うことができる、生命保険料控除です。生命保険料控除は、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定金額の所得控除を受けることができる制度です。

しかし、この生命保険料控除の対象となる生命保険契約には、配偶者またはその他の親族という条件があります。つまり「同性パートナー」の場合には、これに該当しないので、生命保険料控除は使えないことになります。

ちなみに、離婚をした妻の生命保険を支払っている場合には、同じく生命保険料控除が使えないということになりますので、ご注意ください。

相続税や損害保険

「同性パートナー」の相続税はどうなるのか?

では、相続についてはどうでしょう? たとえば一般的には、生命保険を相続税対策に使うととても有効です。それは生命保険の保険金は、「みなし相続財産」になり、法定相続人の人数×500万円が非課税になるからです。

ところが「同性パートナー」の場合は、法定相続人ではないので、これを使うことができません。通常の相続税がかかってくるのです。

しかも、相続でいうと、法的な配偶者ではないので遺留分というものがありません。ですから相続は不利な立場になります。

損害保険での「同性パートナー」の扱いは

次に、損害保険では「同性パートナー」は、どうなっているのでしょうか?

自動車保険では、配偶者の定義を変更して、「同性パートナー」を配偶者として補償する動きがあります。

損保ジャパン日本興亜は、2017年に自動車保険の配偶者の定義を変更して「同性パートナー」も補償も受けられるようになりました。また、東京海上日動火災も、2017年に同性パートナーも配偶者として扱う「火災保険」「自動車保険」を発売しました。三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保も2019年には、自動車保険の配偶者の定義を見直し「同性パートナー」も補償があります。

その他、金融機関のLGBTへの対応は

じつはLGBTへの理解の広がりは、保険だけではありません。金融業界のなかでも広がっています。

例えは、住宅ローンを組む場合に利用する「ペアローン」は、夫婦でしか使えませんでした。しかし今では「同性カップル」も利用できる金融機関も出てきました。

楽天銀行は、同性パートナーでも「連生団体信用生命保険」に加入ができます。また、マネックス証券では、性的マイノリティのために二人で貯蓄ができ資産管理のできる「パートナー口座」が開設されています。みずほ銀行では、本人以外の家族もキャッシュカードを持てる「代理カード」に「同性パートナー」を指定できます。

少しずつではありますが、金融機関もLGBTの方々の利便性をよくする動きが出てきています。しかし、まだまだ制約が多いのは事実です。そして個人の意識自体を変わっていくことも必要でしょうね。

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