Payの“開放宣言”、スマホ決済「Origami」が囲い込みをしない戦略

スマートフォン決済サービス「Origami Pay」を提供するOrigamiが、金融プラットフォーム「Origami Network」を発表しました。Origamiの決済機能などをオープン化し、賛同するパートナー企業に無償提供。各社のアプリ内で、Origami payの決済機能が簡単に利用できるようになるといいます。

決済サービスが乱立し、各社が自身のECサービスなどの「経済圏」への囲い込みを狙う中、なぜOrigamiはオープンな戦略を取るのでしょうか。9月27日に開催された戦略発表会「Origami Conference 2019」の内容から探ります。


無償で決済機能を提供

Origami Networkは、Origamiの決済機能、決済データ分析、独自ポイント機能、顧客管理(CRM)機能をオープン化するという内容。パートナー企業にOrigamiの決済機能などをSDK(ソフトウェア開発キット)として無償で提供します。パートナー企業はあまりコストをかけることなく、自社の持つアプリを「○○pay」にできるというわけです。

これにより一般ユーザーは「Origami pay」のアプリをインストールすることなく、各企業のアプリ内でOrigami payの決済が可能となります。9月26日には、Origami Payによるコード決済に対応したアプリ「しんきんバンキングアプリ」(Android版)がリリース済み。信用金庫の口座残高や入出金明細が確認できる同アプリから、OrigamiのQRコード決済ができるようになりました。

ほかにも、すかいらーくホールディングス、フジテレビジョン、吉野家、Peach Aviationなど14社との提携が発表されたほか、9月27日からOrigami Networkのウェブサイトで参加の受け付けが始まっています。

Origamiの康井義貴社長によると、日本にはカードが1,000種類以上あると言われ、百貨店や航空会社などは、自社のカードで顧客基盤を作り、DMやメルマガなどの手段で顧客とコミュニケーションをしてきました。最近は自社のアプリで顧客との接点を作る企業が増えましたが、「アプリを作る際、決済の基盤やセキュリティなど、自社で一から十まで作るのはハードルが高い。技術的に難しい」という声が多く寄せられているといいます。

Origami Networkは、通常1年や2年といった長い期間を要するカスタマイズが不要。数ヵ月で各企業のアプリでOrigami Payの決済機能が組み込めると、康井社長はメリットを説明します。

どうやって収益化する?

また、スマホ決済のサービスについて、「○○ポイント」や「囲い込み経済圏」といったものが多く、「縦で分断されてきたのがこのマーケットの特徴」と康井社長は分析。そのため、各社のオリジナルのアプリから、オフラインでそのまま決済するのは難しい状況だったといいます。

一方、Origami Networkでは、Origami Payをインストールすることなく、各社のアプリ内で決済ができるようになります。この取り組みを康井社長は「Payの開放宣言」だと説明。「各社様のアプリが主体」と強調しました。

しかし、Origami Networkは無償で提供するとなると、どのように収益化していくのでしょうか。既存の決済手数料に加えて、CRMツール、データ活用による新規集客などでフィーを取っていく考えです。

「決済手数料はマクロでいくと下がっていくので、そこでビジネスを立てるとはあまり考えていない」(伏見慎剛・事業開発ディレクター)

10月1日に迫った消費増税に備え、各社の還元競争が激化する中、新たな展開を打ち出してきたOrigami。囲い込みが進むスマホ決済サービスのあり方に、一石を投じることができるでしょうか。

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