シングルマザーが実家を出るには?養育費が途絶えたときのための法改正

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、実家を出たいという30歳のシングルマザー。今は別れた夫から養育費をもらっているものの、この先ずっともらえるとは思っていないため、金銭的に不安だといいます。FPの前野彩氏がお答えします。

バツイチで子どもと実家住まいです。実家を出たくて賃貸住宅を探していますが、金銭的に不安です。どのように予算を立てて、段取りをすれば問題ないでしょうか。地域の家賃は安くて6万円程度です。養育費は、元配偶者の手取りの約3分の1をもらっています。相手に離婚事由があり、現在の額で公正証書を作成しましたが、ずっともらえるとは思っていません。

〈相談者プロフィール〉

・女性、30歳、バツイチ

・子ども:1人(3歳)

・職業:会社員

・居住形態:親の家で同居

・毎月の世帯の手取り金額:24万円

(給与17.5万円、養育費5.5万円、児童手当1万円)

・年間の手取りボーナス額:80万円

・毎月の世帯の支出目安:14~15万円

【支出の内訳】

・住居費:6万円(実家に入れているお金、食費、光熱費含む)

・教育費:0.6万円

・保険料:2.8万円

‐学資保険2.4万円(子どもが10歳まで払い込み、18歳で300万円受取り予定)

‐死亡保険0.1万円(死亡時1000万円)

‐医療保険0.3万円(65歳まで払い込み終身保険)

・通信費:0.7万円

・車両費:なし

・その他:4~5万円

(子ども用品、交際費、昼食代、衣服費、美容費、雑費などすべて含め、週1万円で支出)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円(うち、1.2万円はiDeCoに拠出)

・現在の貯蓄総額:1000万円

・現在の投資総額:国内株式100万円、iDeCo24万円

・現在の負債総額:なし


前野:交際費や昼食代などの予算を1週間1万円と決めて、しっかりとコントロールしていらっしゃいますね。通信費はもう少しダイエットできる可能性がありそうですが、全体的にはとても健康的な家計です。これからの親子二人暮らしに向けて、準備をしていきましょう。

賃貸への引っ越し予算、いくら用意すれば安心できる?

住み替えの第一歩は、家賃相場を調べることから。お住まいの地域では6万円ということですから、新生活に関連した費用として家賃の5ヵ月分、つまり30万円を初期費用として見積もっておきましょう。

家賃5ヵ月分の主な内訳です。物件を借りる際、一般的には敷金または保証金と礼金が、合わせて家賃の2ヵ月程度~、仲介手数料は家賃の半額~1ヵ月分、翌月分の前家賃として1ヵ月分、契約時からの日割り日数分の家賃、そして、当初2年間分の火災保険料が2万円前後かかります。ほかにも保証会社の費用やカギの交換料金などがかかることもあります。家賃以外の諸費用についても事前に調べておくと、心構えができます。

引っ越し業者を利用する際は、複数社の見積りをおすすめしています。また、お持ちのクレジットカードの付帯サービスに割引プランがないか、保有されている個別株の株主優待の中に引っ越し割引などがないか、チェックしておくといいですね。

また、新居での家具や電化製品、ライトやカーテンなどの生活必需品の購入費用も必要です。電化製品は家電量販店でまとめて買うと、値引き交渉の余地が生まれます。家具や細々とした棚などは一気に買わず、生活しながら本当に必要なものを少しずつ買いそろえたほうが、「この棚、買わなくてもよかった」という失敗が少ないようです。

引っ越し後は、免許証や金融機関、保険などの住所変更を忘れずに。最近は、つみたてNISAやふるさと納税などでマイナンバーを利用することが増えています。いざというときにスムーズに行えるようにしておきましょう。

実家で「かかったつもり」の予行演習を

今は、住居費・水道光熱費・食費の3支出は、親御さんへの6万円で賄えています。引っ越し後はこの6万円がそのまま住居費になり、さらに、水道光熱費と食費、日用品で5万円はかかると考えておきましょう。

仮に追加支出が5万円とすると、現在の1ヵ月の支出約15万円が、引っ越し後は約21万円になります。今のうちから、プラス5万円「かかったつもり」で予行演習をしてみてください。

また、お金のことを中心に考えがちですが、親子二人暮らしになると、お金の負担だけでなく、労力の負担も増加します。食事や掃除、洗濯などの家事負担が増えるストレスもあるかもしれません。親御さんとの距離によっては、お子さんが病気の時の病児保育やシッター代などが必要になるかもしれません。すべてを完璧にせず、お総菜などのお金で買えるサービスは利用する、という割り切りも持つようにしてくださいね。

万が一養育費の不払いに困った時は…

「養育費がずっともらえるとは思っていない」という覚悟は、家計管理においては重要です。

平成28年度「全国ひとり親世帯等調査結果」を見ても、養育費の取り決めをしている人は約43%、養育費を受け取っている人は約24%です。つまり、4人に1人しか養育費が受け取れていないのが実態なのです。

養育費が支払われず、相手に請求をしたいと思ったら、現在の法律では、ご相談者さんが自分で元夫の住所や勤務先、金融機関の支店名などを調べて、差し押さえの請求をする必要があります。しかし現実的に、これは労力とお金がかかり、負担が大きすぎます。

そこで予定されているのが、2020年4月の法改正です。ご相談者さんは公正証書で養育費の取り決めをされていますから、将来、養育費の不払いが発生した時には、地方裁判所に申し立てをすると、裁判所が金融機関や市区町村、年金事務所などに情報提供を命令してくれます。つまり、もしもの時の負担が軽減されるようになるのです。

また、自治体によっては、養育費の不払いに悩むひとり親が支援を申し込むと、自治体と提携した保証会社が不払い分を立て替え、保証会社が不払いの親に請求するサポートなども誕生しています。

自分達だけでがんばらず、困った時には、国や自治体のサポート、相談窓口なども利用しながら、安心して生活できるように準備してくださいね。

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