収入格差で彼がいじけて…好きだけでは満たされない結婚を阻む男性のプライド

女性のほうが地位が高い、収入が多いということで卑屈になる男性は以前に比べれば減っています。それでも今なお、地位や収入に「プライド」をもつ男性も少なくはないようです。


結婚を前に収入がわかって

つきあって2年、2歳年上の彼と結婚を決めたナナミさん(31歳)。彼女は大学卒業後、医療品関係の会社で営業を担当、出張も多く多忙ですが給料も悪くなく、「仕事が大好き」だそう。一方の彼は中堅企業で契約社員として働いています。

「彼は新卒で、ある大企業に入ったんですが3年ほどで人間関係で傷つき、退職したそうです。でも今は技術職で働いている。結婚は私から言い出しました。彼は『お金がないから無理だよ』と言っていたんです。でも生活はふたり合わせればなんとかなるはず。そう言って口説き落としました(笑)」

何でも話し合ってやっていこうと決めたので、ふたりはそれぞれ給与明細を見せ合いました。そのとき彼の顔色が変わったのです。

「私のほうが年収にして200万円くらい多かったんですよ。私は出張も多いし、手当もけっこうあるので。それを見て彼が『すごく格差があるよね。オレのほうが年上なのに』と落ち込んでしまって。私はそんなことは関係ない、私はずっと働くし、あなただって今後状況が変わるかもしれないって必死に説得しました」

それでも彼は、子どもが産まれたらどうするんだ、老後はどうなるんだと嘆くばかり。非正規で働くことの悲惨さがよくわかった、現実を突きつけられたとぼやいていたそうです。

彼との関係がギクシャク

その件があってから1ヵ月、結婚話は進んでいないそう。

「彼はせいぜい100万くらいしか違わないと思っていたようです。だから倍の200万も違っていたことでショックを受けたみたい。だけどそんなのは私に言わせれば“運”でしかない。彼が新卒で入った会社にそのままいれば、今の私よりきっと給料は高かったはずだし。でもそう言うと、『結局、オレは挫折した人間なんだよ』といじける。私としてはどうしたらいいかわからない状況です」

ナナミさんは彼のことが大好き。彼女が出張から疲れて彼の部屋に直行すると、おいしい料理を作って待っていてくれる、彼女が仕事で悩んでいるとじっくり話を聞いてくれる。そんな彼だから生涯をともにしたいと思ったのです。

「収入の多寡で彼への評価は変わりません。だけど彼のほうは私への評価が変わってしまった。“自分より稼ぐ年下の女”とは対等につきあっていけない、まして結婚などできないと思っているみたい。そういうのって、単に刷り込まれた男のプライドと呼ばれるつまらないものだと思うんですよね。私は彼がそんな考えに浸蝕されている人だと思ってなかった。だから私のほうも彼に対してどう接したらいいのかわからなくなっているんです」

会っても前ほど会話が弾みません。結婚式はもともとするつもりもなかったが、レストランで会費制のパーティを開こうということにはなっていました。でも今となっては「結婚」の「け」の字も出せない感じがしているのでパーティの話など出せないそうです。

プライドが邪魔をして

「ただ、結婚する意思があるのかどうかだけは聞いておきたい。そう思って、つい数日前、彼に聞いたんです。結婚がイヤになったのか、と。そうしたら『ナナミへの気持ちは変わってない。ただ、自分で自分が情けなくて先のことが考えられなくなった』と。

どうして彼が自分を情けなく思うのか私にはわからないと言い返しました。あのまま前の会社にいたら私とは知り合えなかったはずだし、それ以前に心身を病んでいたかもしれない。とりあえず健康で、ふたりでがんばっていけるのだから幸せなことじゃないかって。それでも彼の気持ちはスッキリとはしていないようです。少し時間がほしいと言われてしまいました」

“つまらない男のプライド”にいつまでも惑わされていてはいけないと彼女は考えています。収入は高いに超したことはないけれど、それがその人の価値とイコールではないから。彼女は彼の人としての本質を好きになったのであり、収入は付加価値に過ぎません。

そんなことで気持ちを乱されず、先を見て、手を取り合ってパートナーシップを築いていこうというのが彼女の考え方です。こういう場合、いつも女性のほうが前向き。考えてもしかたがないことにとらわれることなく、彼が素直に彼女に引っ張られていくといいのですが……。

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