29年の歴史に幕、惜しむ客 伊勢丹相模原店が閉店

閉店のあいさつをする山下洋志店長(中央)=相模原市南区相模大野の伊勢丹相模原店

 小田急線相模大野駅前に立地し、多くの市民らに愛されてきた伊勢丹相模原店(相模原市南区)が30日、閉店した。1990年9月のオープンから市内唯一の百貨店としてにぎわいを生んできたが、他店との競争激化などで売り上げが減少、29年の歴史に幕を閉じた。この日は開店前から約1500人もの客が列を成し、「思い出は数え切れない」「街の顔がなくなってしまう」と惜しんだ。

 「29年間のご愛顧に深く感謝し、御礼申し上げます」。午後7時の閉店後、山下洋志店長が店頭に立って頭を下げた。集まった買い物客から拍手が起こり、出入り口の鍵が閉められた。

 7月から閉店セールが行われ、買い物客が詰め掛けていたが、この日も多くの人でにぎわった。店舗正面には「29年間のありがとう」と書かれた懸垂幕が掲げられ、店内には地元小学生から贈られた感謝のメッセージも。客が途切れず続き、各階の目玉商品はあっという間に売り切れた。

 閉店の日にタオルや食器などを買った同区の古澤秀子さん(58)は、顔なじみの店員全員とあいさつしたという。「子どもの七五三も結婚記念日も、人生の節目にはいつもこのお店があった。思い出深い場所がなくなることは残念」と寂しげに話した。

 同店は96年に売上高が377億円に拡大したが、以降は低迷。三越伊勢丹ホールディングス(HD)は昨年9月に閉鎖を決めた。同HDは現在、野村不動産と土地・建物の売買交渉中で、野村不動産はマンションと小売店の複合施設整備を検討している。

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