火山活発化に追い打ち 箱根町、固定資産税上げ

 箱根町は2016年度から、財政難解消を目的に固定資産税率を1.4%から1.58%に引き上げる。近年の赤字体質を改善できず、各予算の削減を行ってもなお、16年度から数年間にわたり毎年度平均約7億5千万円の財源が不足するという台所事情からだ。だが箱根山・大涌谷周辺の火山活動活発化の影響で観光客が減る中、観光関係者からは「増える支払い分をどう確保すればよいのか」「なぜ固定資産税なのか」といった戸惑いや疑問の声が聞こえてくる。

 「負担増は数百万円」とある観光関係者は漏らす。町内に一定の土地などを持つ観光関係者らにとって、今回の同税率の引き上げがもたらす影響は大きい。箱根山の火山活動が終息に向かい、11月20日に噴火警戒レベルが最低の1(活火山であることに留意)に引き下げられたが、「まだロープウエーが全区間では動いておらず、観光客数が元に戻るには時間がかかる。(客への影響から)料金は上げられない。身を切らなければいけない」と力なくつぶやく。

 同税率引き上げについて、町は当初、1・68%とする改正案を町議会11月臨時会に提出していた。約7億5千万円全額を同税で埋めようとすると、それだけの税率が必要だった。

 同議案は継続審査となり、12月定例会で審査してきた行財政改革調査特別委員会が税率を1・58%と緩める意見を提示、同税の課税基準日が1月1日のため、年内の成立を目指した町がそれをのむ形で決着した。

 財源確保の増税対象として、まず第一に固定資産税を検討した理由について町は「町外からも負担を求めたかった」と説明する。

 町特定政策推進室によると、同税の納税義務者のうち町外者が全体の7割で、その半数程度が観光関係者。町では年間約2千万人の観光客受け入れのために清掃費、下水道費、消防費など観光関係で多くの支出をしており、同推進室は「町内・町外の不公平感をなくしたかった」と明かす。

 また大幅な税収増を図るには同税ぐらいしかないという町財政の事情もある。例えば14年度の町税約62億6千万円のうち、固定資産税は約7割の約42億9千万円。個人町民税は約7億2千万円、法人町民税はその半分以下となっている。温泉利用者に課される入湯税の引き上げは客離れにつながる恐れがあるなどとして採用しなかった。「引き上げは苦渋の決断。やむを得ず引き上げに至ったことを理解してもらいたい」と町は話す。

 ただ引き上げ幅を緩和したため、なお毎年度平均約2億7千万〜2億8千万円の財源不足が見込まれる。町は「今後、町民サービスの低下を招かないことを第一に考えたい」と現在、歳出削減策などを検討している。

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