三菱長船 利用者減少で通勤船廃止 香焼-大波止

運航最終日に三菱社員らを乗せて大波止桟橋を離れる通勤船「ぐらばあ」。右後方は長崎造船所本工場=長崎港

 長崎港大波止桟橋と三菱重工業長崎造船所香焼工場を結ぶ通勤船「ぐらばあ」(425トン)が30日を最後に廃止された。同工場の稼働開始時から48年間運航されたが、近年は造船事業縮小で利用者数が減少していた。
 ぐらばあは全長38メートルで、エンジンは同社製。野母商船(長崎市)に運航を委託。1971年、香焼工場稼働に伴い運航を始めた。定員650人で、利用は社員や関連企業の従業員らに限られる。平日は朝1便、夕方2便を運航。距離8.4キロを20分で結んできた。
 三菱重工によると、豪華客船建造中の2015~17年のピーク時は、増便を出して1日に片道約2500人を運んでいた。だが造船事業縮小による人員減で、直近の利用者は約300人にとどまっていた。
 今後はさらに利用者減少が見込まれており、マイカーなど代替交通で対応可能と判断した。ただ、始業に間に合う路線バスが足りず、暫定的にチャーターバスを運行するという。
 運航最終日の朝、大波止で乗船した男性(60)は「10年間この船で通った。できれば存続してほしかったが、会社の事情を考えれば仕方がない」と話した。若手のころ船を利用したという蜂谷靜夫・同造船所長代理も出航を見送った。
 かつては本工場と松が枝、戸町を結ぶ通勤船もあったが、1998年に廃止。香焼-大波止が唯一残っていた。

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