短大卒から年収1250万円、“転職の達人”motoさんが実践する「軸ずらし転職」とは

終身雇用が過去の遺物になった言われる今。しかし、思い通りに年収がアップするような転職先にはなかなか出会えないのも事実です。motoさん(32)は短大卒業後、地方で年収240万円のホームセンターに就職するキャリアからスタート。4度の転職を経て本業のベンチャー企業の管理職では年収1,000万円超、ブログ執筆による広告収入をはじめとした副業では年収4,000万円と10年間で年収を20倍超にした「転職の達人」です。8月には自身の経験則を綴った『転職と副業のかけ算』(扶桑社)を発行しました。

今回は、彼の提唱する年収アップの秘訣である「軸ずらし転職」とは何なのかを聞いてきました。果たして、私たちのような普通のビジネスマンでも可能なのでしょうか?


――ブログやTwitterなどで転職や副業について盛んに発信し、多くのフォロワーを集めるmotoさんですが、本業では営業マンとしても活躍しています。4度も変わったそのキャリア遍歴について教えてください。

moto:私は短大を卒業後、まず地元のホームセンターに就職しました。その後は人材会社、次にリクルートへ入社しました。3度目に転職したベンチャー企業は楽天に買収され、今は別のベンチャーで営業部長を務めています。本業の年収は1,250万円です。

副業は、ブログやnoteでの情報発信をメーンにして、年収4,000万を稼いでいます。(Web上の)情報発信をはじめたきっかけは高校時代にやっていたmixiで、その後は就活生向けのブログなどを書いていました。ここ2~3年でブログのテーマを転職に据えて「転職アンテナ」というブログを運営しています。

――motoさんが自身でも実践して成果を出している「軸ずらし転職」とは、具体的にはどのようなものですか?

moto:年収水準の高い業界や職種に「ずらして」転職していくというものです。僕は年収というものが「業界×職種」で決まると考えています。そのため、このどちらかを(業界や業種の)隣接している分野にずらして転職していくのです。

例えば、小売り業界は一般的に年収があまり高くないとされています。しかし、接点のある業界には、商品を仕入れる先の商社やメーカーなどがあります。これらの業界は小売りに比べると年収が高いですよね。メーカー側が求めている能力を調べて、小売でその能力を伸ばすことで、こうした隣接業界に転職していくのです。

あと、同じように職種でも“隣接”している業界に行くのもおすすめです。僕は最初、ホームセンターで人事を担当していたことで、その次の転職で人材業界の営業職に転職しました。業界・業種の両方を年収の高い方にずらしたのです。その後は職種を(営業職に据えることで)ずらさず、業界を変えることで年収を上げてきました。

――キャリアのスタート時から軸ずらし転職を実践してきたmotoさんですが、どういったきっかけで始めたのですか?

moto:高校生の時に「30歳で年収1,000万を稼ぐ」と決めたのがきっかけです。『四季報』などを見ると、業界別のだいたいの平均年収が載っていますよね。30歳で1,000万をもらうにはどうすればいいか、というのを考えながらキャリアを考えていました。

また、転職を前提に考えていたのは、ホリエモンのライブドア事件がきっかけでした。あそこまで勢いのある会社が、ある日突然倒れたわけです。会社という存在はいつどうなるかわからないな、と思ったのです。そうした事件をみて「会社に依存せず、どこでも食って行ける人間になりたい」と考えるようになりました。同じ会社に居続けるという考えは(最初から)ありませんでしたね。

――motoさんは進学先についても、あえて短大に行くことで早く社会に出る道を選んだそうですね。四大卒から総合職というのが、今でもごく普通でむしろ楽なキャリアという気もしますが。

moto:4年制の大学へいくよりも、2年早く社会に出て経験を積んだほうがよいと考えて短大を選びました。僕は、四大卒の学生が入社してくる2年後までに、彼らより高い年収をもらえる経験を積もうと考えたのです。

就活で大手の「総合職」を選ばなかったのは「入社するまで何をするかわからない」という「先の見えなさ」にありました。入社後の配属先は、営業かマーケティングか、人事なのかも分からない。配属先のエリアもわからず、入社後に引っ越しをする可能性もある。総合職で入社したら、2年後に自分が4大卒より高い年収をもらえるか分からないと感じたのです。

総合職で入社して、会社にいいように使われてしまっては、結局、自分が何ができる人間なのか分からなくなってしまう、とも考えました。今ではこの選択をしてよかったと思っています。

――今やmotoさんのように1社にとどまらず、自分の能力で会社を渡り歩く生き方が日本でも徐々に浸透してきています。私たちが実際に「軸」をずらして違う職種や業界に挑む場合、履歴書や面接ではどんな点をアピールすべきでしょうか? 一般的には、「今の会社では営業成績トップで社長賞を取りました」みたいなポイントが浮かびますが……。

moto:大事にすべきは、「なぜ自分の仕事の、どの部分が(今の会社で)評価されたのか」という点です。「賞を取るまでのプロセス」や「なぜこの賞をもらえたのか」という部分を理解することが大切です。

今の会社の評価=転職市場での評価というわけではありません。今の会社でもらった賞は、転職市場においてどういう価値があるのか、その価値は、自分のどの部分が評価されたものなのか、を考えるのが大事です。社内の評価は必ずしも社会からの評価とは一致しないのです。

例えば、昨今話題になったリクナビ問題(運営会社が学生の内定辞退予測の情報を企業に販売した)などはいい例ですよね。あのサービスは社内で評価されて表彰されていたそうです。しかし、世の中の評価は厳しいものだった。社内の賞は、必ずしも世の中の評価とはマッチしないのです。社内の表彰が全てではないのです。

社内で賞を取れなくても、転職で評価される人はたくさんいます。賞自体に価値はあるわけではない、という認識をすることが大切だと思います。

――motoさんは実際にSNS上などで転職の相談を受けることも多いですね。なかなかキャリアチェンジしづらい業種や業界の人が、軸ずらし転職で突破口を見出させた事例はありますか?

moto:最近だと、介護施設で管理栄養士をしていた人が、食品メーカーに転職した事例がありました。管理栄養士は、職場を変える転職をする人が多いですが、食品を作るメーカーに転職することで大きく年収をあげることができていました。

現場で調理をこなすだけでなく、その上流の食品を提供する側に回ることで、現場の経験を活かし、転職したのです。

「軸をずらす」先は多くあるので、同業同職種以外に目を向けることが大切です。保育士の資格を活かして保育園で働くのもいいですが、現場の経験を活かして、近隣の業界に行くものよいのではないかと思います。

――軸ずらし転職は年収アップのための“特効薬”のようにも思えます。一方で、多くの会社を渡り歩く生き方をあまりしてこなかった日本のサラリーマンには、知らない世界に飛び込む抵抗感を感じてしまう人も少なくないのでは。どうアドバイスしますか?

moto:自分の市場価値を意識することが大切だと思います。「自分はこの会社に、どう貢献できるか」を明確に語れるようにしていくと良いです。僕の場合、「自分はこの会社に○○な価値を提供できるから、これだけの年収がほしい」と伝えられるようにしています。「自分の提供価値」を意識すると、抵抗感は少なくなると思います。

とはいっても、未経験の業界に入るのは気後れしますよね。ただ、気後れして何も行動をおこさないでいるより、まずは書類を出してみるなど、何かしらのアクションをすることが大事です。「Googleに受かったらどうしよう」というような「タラレバ」な心配をする前に、行動したほうが物事は前に進みます。まずは応募して、書類選考が通るかやってみる。これが大事です。

勘違いしないでほしいのは、転職はあくまで「手段」であるということです。むやみに転職はしないほうがいいです。もし転職を考えるのであれば、「次の転職先で自分はどんなスキルを得られるか」という視点を持つと良いです。例えば、介護職から営業職に行った場合、「介護×営業」というスキルの掛け合わせができます。この掛け合わせを増やしていくことで、自分の次のキャリアで必要なことなどがわかってきます。今の段階で「次」が見えてこない人は、(今の会社を)で実績を積むことが大切だと思いますよ。

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moto(もと)
1987年生まれ。短大卒業後、ホームセンター勤務を皮切りに大手人材会社、リクルートなど4度の転職を経て現在はベンチャー企業の営業部長を勤める。本業の傍らTwitterやブログで転職や副業の情報を発信するブログ「転職アンテナ」を運営。ブログやSNSによる副業年収は4,000万円。著書『転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方』(扶桑社)は発売7日で4万部を突破。

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