社説(10/2):中国建国70周年/民主化の道筋を描けぬ悲劇

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 国威発揚の大規模な軍事パレードを目にして周辺国の人々が感じるのは、底知れぬ恐怖に違いない。人権の尊重や法の支配が普遍の価値と考えられる時代に、民主化の道筋さえ描けない国の悲劇をそこに見た人も多いだろう。

 中国が建国70周年の記念式典で、過去最大規模の軍事パレードを実施した。会場の北京市中心部は厳戒態勢が敷かれ、民主化を求めるデモが続く香港でも同様に、警察が1万人に上る態勢で警戒に当たったという。

 建国を祝う節目の行事が軍や警察の厳重な警戒と監視下で行われる。それ自体がこの国の異質さを際立たせていよう。軍事力の露骨な誇示は、覇権主義的な姿勢に警戒を余儀なくされている国際社会にさらなる懸念を広げた。

 軍事パレードでは、米国全土を射程に収めるという多弾頭型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」のほか、各種の最新兵器や航空機が公開された。多数の人民解放軍兵士らが一糸乱れず行進し、強大な軍事力を内外にアピールした。

 この日の北京は、微小粒子状物質「PM2.5」の平均濃度が「中程度汚染」に見舞われ、パレードを伝えるテレビのニュース画像でさえ、周囲が白くかすんで見えた。図らずも、中国が抱える環境問題の深刻さをあらわにした場面でもあった。

 現在の中国に必要なのは軍事力強化ではない。環境問題をはじめ、少数民族の人権抑圧の是正、膨大な数に上る極貧層の救済、急激に進んでいる高齢化への対応、失速する経済の立て直し。優先すべきなのは、こうした困難な国内問題の解決だ。

 国内経済は米中貿易戦争で急速に悪化している。それ以前から減速傾向は顕在化し、2018年の成長率は28年ぶりの低い伸びにとどまった。雇用環境の悪化は社会不安を増大させ、政権批判が次第に強まっていくだろう。

 対外関係に目を向ければ、現在、アジアで最大の軍事的な脅威は中国だ。南シナ海では岩礁を埋め立てて、人工島を造成し、軍事拠点化を進めている。ここでは周辺国との関係が険悪化している。

 東シナ海では沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し、公船による日本の領海侵入を繰り返している。覇権主義的な中国の動きを巡って、国際的なイメージは悪化の一途だ。

 ニューヨークで開かれている国連総会で先週、諸外国から次々に懸念が表明され、中国の代表団は火消しに追われたという。各国は香港の民主化要求に共感し、少数民族の抑圧に重大な懸念を抱いている。中国に対する国際世論は非常に厳しい。

 国内融和と国際協調。中国に必要とされているのは、この二つだ。問題の平和的な解決を図りつつ、民主主義国家への緩やかな移行を目指すのが最も望ましい道だろう。