テイラー・スウィフト『ラヴァー』 愛はすべてのものに勝つ

テイラー・スウィフト『ラヴァー』

 7枚目のオリジナル・アルバムです。2年前の前作『レピュテーション』では様々なハラスメントに立ち向かう強い27歳を見せてくれた彼女ですが、今作のテーマはなんと“ロマンス”。LGBTや性差別などの問題に目をそむけるのではなく、社会の闇に対抗できる最強の力が“ロマンス”つまり愛なのだというメッセージを全身で伝えているのです。前作ではサウンド面でもアートワークにおいても戦う女性のイメージがありましたが、今作ではすべてがポジティヴなイメージに変化、アートワークはパステル・ピンク、すべての曲が極上のポピュラーソングに仕上がっています。それは人種の壁を突き破ったユニバーサルなサウンドと言えましょう。

 かつて戦うプロテスト・ソングを歌ったボブ・ディランが近年、フランク・シナトラらが愛唱したスタンダード曲をカバーしました。なぜスタンダードを歌うのかという質問に対して、究極のロマンティシズムを持つスタンダード(当時のポピュラー・ソング)が現代にこそ必要だから、と答えたそうです。

(ユニバーサル・2500円+税)=北澤孝

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