消費税率10% ため息「2%大きい」 軽減税率で長崎県内でも戸惑い

「まる得商品券」の購入を求めて列をつくる市民ら=長崎市、ベルナード観光通り

 消費税率が10%に引き上げられた1日、長崎県内でもさまざまな商品やサービスが値上げされるのに合わせ、軽減税率制度とキャッシュレス決済のポイント還元制度が始まった。制度の複雑さに事業者や消費者からは戸惑いの声が聞かれ、対応レジの導入やポイント還元制度への登録が間に合わなかった事業者の間には不安も広がっている。

 「すみませ~ん。値段が変わります」。1日午前0時すぎ、女性店員が申し訳なさそうに伝えた。たばこやパンを扱う「ぱんのいえ思案橋店」(長崎市本石灰町)。客足が途切れるわずかな合間に、たばこ1銘柄ずつについて新税率の価格を店員がレジに登録し、もう1人の店員が値札を交換していく。「うわっ、増税かぁ」。小銭を握った酔客がぼやいた。
 長崎市中心部のアーケード「ベルナード観光通り」には午前10時すぎ、長い列ができた。長崎浜市観光通商店街振興組合が増税後の買い控えを抑えようと、10%のプレミアムが付く「まる得商品券」をこの日限定で販売。田川清浩理事長は「駆け込み客で昨日までは人通りも多かったが…。手を打っておいて良かった」とほっとした表情。
 軽減税率で食品の持ち帰りは8%、外食は10%で分かれる。長崎市茂里町の大型商業施設みらい長崎ココウォークのフードコートにあるたこ焼き店「築地銀だこ」では、店員が「店内でお召し上がりですか」と尋ね、持ち帰りと区分していた。持ち帰り客がそこで食べ始めた場合について、施設関係者は「お客さまの申告通り信じるしかないですね」と苦笑い。
 大学の食堂や社員食堂も外食扱いになる。長崎大学生協が運営する学生食堂も税率引き上げ分を価格に転嫁した。女子学生(20)は「2%でも学生にとっては負担が大きい」と不安げな表情で話した。
 何が軽減税率の対象になるかも複雑だ。例えば五島名産のつばき油は、食用なら8%だが、化粧品用なら10%になる。五島市の福江港ターミナル内にある土産店「江口土産品」の女性店員(62)は「同じ油なのに、なんだかねえ」と納得がいかない様子。
 複数税率に対応するレジの導入が間に合わなかった事業者も。同ターミナル内の土産店「南松海産物」では、業者に注文済みだが、在庫不足で納入時期が未定という。このため全商品を8%の税率で計算するしかない状況。家族で店を営む松本悦子さん(56)は「今日からは、税率が10%の商品を売ると、うちが損する形。何日もこんな状況が続くと困る」とため息をついた。
 キャッシュレス決済のポイント還元制度で、1日から還元の対象となる県内の加盟店舗数は4856店(9月25日時点、経済産業省調べ)。みらい長崎ココウォークは8月に申請したが、国の手続きに時間がかかり、まだ登録されていない。そこで1日から独自のポイント還元キャンペーンを始めた。一方、加盟店になった南島原市口之津町のカフェ「アトリエグランパ」は、「田舎じゃQR決済を利用する人も外国人観光客も少ない」と疑問を投げ掛けた。
 自治体が販売するプレミアム付き商品券の発売も始まった。長崎市内の指定売り場では、正午前ごろになって「ようやく落ち着いてきた」と女性担当者。商品券を買った市内の女性(87)は「使える店舗を確認して追加購入を考えたい」と話した。

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