諏訪にきらめけ! くんち新世代・2 魚の町・川船 小西海斗さん「全部全力」豪快船回し

「見る側を圧倒したい」と意気込む小西さん(中央)=長崎市元船町

 9月中旬、長崎市元船町のお旅所。秋の訪れを告げる少し冷たい夜風を勇猛な掛け声が切り裂く。「ヤッセ、ヤッセ!」。根曳(ねびき)衆16人の最前列で声を張り上げる小西海斗さん(20)から汗が飛び散った。
 魚の町は、かつて魚市場があったことにちなみ川船を奉納している。「船回しは右2回転半」「根曳に補欠なし」「囃子(はやし)も含め全員男」といった伝統を忠実に守っている。重さ約1.5トン、長さ約5メートルの川船を屈強な男たちが息を合わせて回す。
 父は総指揮者の長采(ながざい)。自身も魚の町で生まれ育ち、くんちは常に身近な存在だった。2005年の前々回奉納時に囃子として出演。根曳衆として臨むのは今回が初めてとなる。
 最前列は良くも悪くも目立つ場所。だからこそ妥協は許されない。元来、「やる以上は全部全力で頑張る」という性格だ。自主練習では誰よりも早く走り込みを始め、稽古では声を張り上げてきたつもりだ。
 高校卒業後、公務員を目指して勉強している。古里が大好きだから、ずっとくんちに出続けたい。「次の世代に憧れてもらえるように。周りを納得させられるように」。くんちの未来を担う強い意志が言葉の端々にみなぎる。
 川船は一つ一つの動きにメリハリがあり、豪快かつ繊細な船回しが見どころだ。「全力で走って、迫力を出したい。見る側を圧倒する」。令和初のくんちで“スタートダッシュ”を決める。

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