さあサモア戦!「大番狂わせ」の勢いでベスト8王手なるか アイルランド戦が狙いどおりだった理由 ラグビーW杯【写真特集】

 世界ランキング2位(当時)、優勝候補アイルランドとの試合でジャイアントキリング(大番狂わせ)を起こした日本ラグビー。「奇跡」とも言われた勝利で、初のベスト8進出に向けて大きく弾みをつけた。5日はいよいよサモア戦。勢いづくと怖い相手だ。勝利に加え「ボーナス点」も鍵になる。試合の前に、アイルランド戦の歴史的勝利とサモアの実力を写真とともにおさらいしておこう。

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 ▽対アイルランド誰も勝つとは思っていない」

 試合前、アイルランドの地元紙は「アイルランドが40~50点を取って日本を圧倒する」と予想。英大手ブックメーカーによると、日本勝利の賭け率が9倍なのに対し、アイルランドは1・07倍だった。

 ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは「誰も勝つとは思っていない。誰も僕らがどんな犠牲をしてきたかも分からない。信じているのは僕たちだけ」と、選手を送り出した。

▽我慢の前半

 前半20分までに、アイルランドに2つのトライを決められるなど、9点差をつけられる展開。それでも鋭いタックルを浴びせ続け、諦めずにボールをつないだ。

▽雰囲気が一変

 先発を外れた主将のリーチ・マイケルが出場すると、会場の雰囲気が一変。日本コールが巻き起こった。

 9ー12で迎えた後半18分、途中出場の福岡堅樹が歴史的勝利に導く逆転トライ。福岡は、大会前に右ふくらはぎを痛めて開幕戦は欠場。故障者が出たため、アイルランド戦当日に急きょ控えでベンチ入りした。トライの場面が訪れたのは、出場から9分後だった。

▽奇跡なんかじゃない! 勝利が「狙い通り」だった理由

 2015年W杯、日本はパスをつなぐスタイルで歴史的な3勝。一方、強豪が集うスーパーラグビーで優勝実績を持つジョセフヘッドコーチが就任し、推し進めたのはキックを駆使する戦術。結果が出ず、選手側と首脳陣がぶつかることもあった。

 17年、強豪フランス戦をきっかけにチームが変わる。キックの少ない戦術を試して引き分け、キックでもパスでも攻められる選択肢の幅を持てるようになった。

 今回のW杯アイルランド戦では、ロシアとの初戦と対照的にキックを減らした。ボールを取り戻すのが難しい屈強な選手たちに対し、自分たちからキックでボールを手放さないようにだ。ボールを奪えず焦るアイルランドの隙を突いた。結果は19ー12。狙い通りのジャイアントキリングで、福岡は試合後「奇跡なんかじゃない!」とツイートした。

▽サモアの実力は

 サモアはどんなチームか。世界ランキングは15位で、過去のW杯ではベスト8入りの経験がある。日本は前回大会1次リーグでも対戦し、26-5で勝利した。

 サモアは今大会、ロシア戦では前半は反則が多く苦戦したものの、後半に爆発力を発揮し、一挙5トライをマーク。日本の30点を上回る34点を奪っており、勢いづくと怖い相手だ。スコットランド戦では、1点も奪えず敗れた。

 日本の8強進出の鍵となるのは、4トライ以上のチームと7点差以内で負けたチームに与えられる1点のボーナス点。勝利の上でボーナス点を上積みできれば、最後のスコットランド戦をより有利な立場で迎えられる。

 アイルランド戦の勝利で世界ランクを1つ上げ、過去最高の8位とした日本。サモア戦は5日午後7時半開始予定だ。(構成、共同通信=横田敦史)

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