【MotoGPコラム】ヤマハの災難とドゥカティ復活の理由。実はライフが短いミシュランタイヤのハードスリック

 イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。第14戦アラゴンGPではヤマハ勢がタイヤに苦戦する一方で、アラゴンは苦手とされているドゥカティ勢が復調を見せていた。その理由は何なのか。オクスリーが解説する。

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 ヤマハは第14戦アラゴンGPで散々な1日を過ごしていたし、スズキも同様だった。1周目でアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)がフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)に接触して転倒させたのだ。一方、ドゥカティは第12戦イギリスGPと第13戦サンマリノGPでは無残なレースをしたが、ここでは良いレースをしていた。

 ドゥカティはどうしてアラゴンで調子が良かったのだろうか?(アンドレア・ドヴィツィオーゾのドゥカティ・デスモセディチGPが時速約346.1km/hを出した最速のバイクであり、マルク・マルケスのホンダRC213Vより時速約5.9km/h速かった事実は別として)アラゴンは大部分がロングコーナーで、通常はデスモセディチGPが強さを出せるところではない。バイクのバンク角は多くの時間深くなり、そのせいでタイヤを傷めてしまう。

 もしかしたら、バンク角が深い時間が長いことが、ドヴィツィオーゾがあれほど強かった理由かもしれない。なぜならドヴィツィオーゾはタイヤ管理の名手であるからだ。

「マーベリックが僕を追い抜いた時、彼はかなりスピンしていてだいぶ煙が上がっていた」とミラーは付け加えた。

「ハードは数周なら素晴らしいよ。でもタイヤからグリップがなくなってしまう。だからマーベリックは僕に追いつくためにタイヤをさらにスピンさせ始めた。レースの最後には、マーベリックのタイヤの左側面にはラバーが残っていなかったね」

 一方、ロッシはさらにトラブルに見舞われ、8位まで順位を落としていたのだ。「5周を終えたところでリヤのグリップが大きく落ちたから、スローダウンしなければならなかった」とロッシは説明した。

セッティングに問題ありと語るバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

「タイヤの問題というよりは、セッティングの問題だと思う。スライドすることが多かったし、タイヤのエッジでスライドすると、さらにタイヤを傷めてしまう。だから解決策を見つける必要がある」

 ブリーラムで行われる次戦第15戦タイGPで、マルケスは7年間で6度目のタイトルを獲得するかもしれないし、ヤマハのライダーもそれほど苦戦することはないかもしれない。ミシュランは特別仕様のハード寄りのタイヤを、この超難関コースに持ち込むからだ。

 2018年のタイGPでビニャーレスとロッシは優勝争いに絡んだが、優勝したマルケスにビニャーレスは0.3秒、ロッシは1.5秒の差をつけられたのは、それが理由だ。アラゴンでロッシはマルケスから23秒遅れでフィニッシュした。

 ヤマハは2019年シーズンに改善を見せているが、まだ先は長いようだ。

10番手スタートから2位表彰台を獲得したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)
終盤、2番手を走るビニャーレスに迫ったドヴィツィオーゾとミラー

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