諫干問題 「対話」条件付き参加も 江藤農相、長崎県など視察 「非開門で基金」改めて表明

営農状況などについての説明を受ける江藤農相(中央)=諫早市、中央干拓地

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査問題を巡り、江藤拓農相は2日、9月の就任後初めて長崎、佐賀両県を訪れた。江藤農相は終了後、記者団に対し「開門せずに漁業振興基金での和解が最善」と改めて表明。開門派漁業者側が求めた「訴訟外で多様な意見を協議する対話の場」について、訴訟長期化による漁業者の負担に配慮した上で「一方だけでなく、バランスよく地域のことを考えられる対話の場なら参加できる」と条件付きで応じる考えを示した。
 江藤農相は同日午前、佐賀市内で開門派漁業者ら約30人と意見交換し、続いて山口祥義佐賀県知事らと面会。山口知事は訴訟の結果にかかわらず、長期的な視点で有明海再生事業の予算確保、拡充を求めた。
 その後、本県入りし、中村法道知事ら約30人と諫早市役所で意見交換。中村知事は、非開門による有明海再生への取り組みなどを要請。江藤農相は出席した営農者や住民代表らから潮受け堤防の防災効果や環境保全型農業の進捗(しんちょく)状況を聞き、「人命や財産を守る義務があり、営農に影響が出る判断はできない」と述べた。
 最高裁は6月、漁業者の開門請求など2件の上告を棄却し、「非開門」判決が初めて確定。一方、2010年の開門確定判決を巡り、国が漁業者に開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟上告審で、最高裁は9月、開門確定判決を事実上「無効」とした二審福岡高裁判決を破棄、同高裁に差し戻す判決を言い渡し、開門と非開門の相反する司法判断が並立する状況が続いている。

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