青天井の教育費で家計は火の車、ボーナス補填でしのぐ日々

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、子ども2人の教育費に家計が圧迫されているという47歳の共働き主婦。教育費に月20万円以上かかり、月々の収入でまかなえずボーナスから補填する日々です。家計を立て直すことはできるのでしょうか? FPの當舎緑氏がお答えします。

子どもの教育費に家計が圧迫されています。月々の収入ではまかなえず、ボーナスから補填しています。いまの家計内容を見直したく、ご相談させていただきました。受験が終われば少しは落ち着くだろうと思っておりますが、その後も学費が発生するので、そこまでラクになるとは思っていません。老後にも不安を感じています。

住宅ローンは残り3年ほどで完済予定です。保険料は、負担が大きいので見直しをしましたが、夫の保険は60歳払い込みのため、このままの方がよいといわれております。化粧品は以前のものよりランクを落としたものに変えました。通信費は格安スマホなどを検討してみたのですが、実家の両親との家族割などもあるため、大手キャリアのままにしたいと考えています。水道光熱費、日用品代も見直したいと考えていますが、具体的な案が思い浮かびません。他に見直すところがあればご教授ください。どうぞよろしくお願いいたします。

〈相談者プロフィール〉

・女性、47歳、既婚(夫:50歳)

・子ども2人:16歳、11歳

・職業:会社員

・居住形態:持ち家(マンション)

・毎月の世帯の手取り金額:58~60万円

・年間の手取りボーナス額:約300万円

・毎月の世帯の支出目安:80万円ほど

【支出の内訳】

・住居費:8.8万円

・食費:13万円

・水道光熱費:3万円

・教育費:23万円

・保険料:8.1万円

・通信費:2.3万円

・車両費:1万円

・お小遣い:9.5万円

・日用品代:3万円

・その他:9万円(美容、被服、レジャー代ほか)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・現在の貯蓄総額:50万円

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:320万円


當舎:家計を拝見いたしました。まず、住宅ローンが残り3年で完済予定とは、素晴らしいですね。お子様が16歳と11歳とのことですので、これまでがんばってこられたのがよくわかります。

ただ、その代わり、資産状況として、現在の貯蓄額が心もとないのと、投資をまったくされていらっしゃいませんので、今後、教育資金が心配なのはもちろん、ご夫婦の老後資金が少ないのが気になります。今回は、教育費が今後かかっていく中での家計の立て直しを考えてみましょう。

月々の教育費、23万円が妥当かどうかを考える

毎月の世帯の手取り金額58~60万円に対して、毎月の支出目安が80万円。毎月、貯蓄額として2万円を積み立てしているものの、それ以外はボーナスで補てんしている状態です。

日用品や通信費の見直しも検討されているようですが、10月の消費税増税を考えると、日常の生活費用を減らすというのはなかなか難しいものです。まずは、削減効果の高い「教育費」と「保険料」の費用に着目しましょう。

教育費は、毎月23万円ということですが、相談者もわかっているように、かなり高い数字といえます。おそらく、子どもに言われるままに、内容を吟味できず支出して、いまさら「ダメ」といえない状況に陥っているのでしょう。

がんばっている子どもに対して「お金を出せない」と言うのは、親として心苦しい気持ちだということはもちろんわかります。ですが、できないものはできないと、正直に子どもにも言ってみてはいかがでしょうか。

月々の支出が妥当かどうかを見ていく中で、大切なポイントは以下の3点です。

1.教育費の過大な負担がいつまで続くのかを親子で確認する
2.将来の進路について考えさせる
3.保険が本当に必要なのかを考える

まず、最初の「いつまで続くのか」という点ですが、2~3年程度で、その後は減額することが予想できれば、今のままでも問題はないかもしれません。ところが、減額する予定もないうえに、さらに増額するおそれがあるのであれば、家計が破たんするのは目に見えています。

「今の支出は仕方がない」と親としてあきらめていませんか。子どもが、親の懐事情を把握することはなかなかありませんから、親子で「教育費の支出が減らないのであれば、受験費用のための貯蓄ができないこと」「親の老後資金が準備できない可能性があること」をオープンに話し合ってみましょう。

進路を踏まえたうえで、今後かかる教育費を試算する

上のお子様が16歳ですので、目前の受験をどうするのか考えて教育費を試算してみましょう。

進路を考えさせると、自ずとかかる費用の総額が予想できます。16歳と11歳であれば、今後受験が控えています。子どもに将来の進路を考えさせていくうえで、今のままの支出が続けば、将来の夢をあきらめざるを得ないことを説明してあげるというのも、親ができる金銭教育といえます。

日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査(平成30年度)」のデータを見てみましょう。

この調査結果によると、高校入学から大学卒業までにかかる必要な入在学費用は953.4万円となっており、前年よりも18.1万円増加しています。また、一番高い私立文系で入学費用は90.4万円がかかります。今後16歳のお子様が大学に進学した時の入学費用は、現在の貯蓄50万円と、毎月貯蓄額の2万円の総計でぎりぎり足りるかどうかでしょう。

また、文部科学省が公表している「平成29年度 私立大学入学者にかかる初年度学生納付金平均額の調査結果」によると、全学部の平均は1,333,418円となります。

入学金のために、教育ローンを親が借りるという選択肢もありますが、それでは、せっかく住宅ローンを終えた親の老後資金の準備がまた遅れることとなります。まずは、貯蓄についても、子ども毎にいくら教育費が準備できるかどうか、目的別に口座を分け、貯蓄目標を立てること、そして今の教育費が必要なものなのかを確認しましょう。

昔加入した保険を今に生かす見直し方法もある

現在加入中の保険は60歳払い込みということで、その後の負担がないため、このままでいいということですが、保険の見直しは家計削減のためには大きな効果があります。

60歳までの払い込み保険だから見直ししなくていいという考え方もあるでしょう。ただし、以前に加入した保険だからこそ、補償は十分か、それともかけ過ぎがないかなど、バランスよく加入しているのかどうかの疑問が残ります。保険の見直しは「やめる」という選択肢だけではありません。特約を外したり、保険金を減らしたり、今の保険を生かしつつ、見直しをするという選択肢もあるのです。

日本FP協会のこちらのページも参照してみましょう。ライフプランごとの保険の見直しの仕方、必要補償額の計算の方法などが説明されています。

自分で難しい場合には、まずは、お近くの保険の代理店をいくつか回ってみて、提案内容を比較してみてはいかがでしょうか。複数の提案を比較することで、よりよい保険に近づくことができるでしょう。

住宅ローン完済後は、財布の紐をしっかり締めて

3年後に住宅ローンがなくなると、1ヵ月に8.8万円の支払いが不要になります。この時点でボーナスから補てんしなくていい家計を目指しましょう。11歳の子どもの受験費用を貯めつつ、ご夫婦の老後資金、住宅のリフォーム費用の準備などが、今後必要となります。

ご夫婦の老後資金には、確定拠出年金など、毎月、確実に天引きされ途中で引き出しができないもの、教育費は、とりあえず受験時期の入学費用から逆算して積立金額を計算しましょう。

いずれにせよ、住宅ローンの支払いが終了しても、気を引き締めて、目的別の口座に積み立てていきましょう。水道光熱費、日用品代の節約は、教育費と保険の見直しをし、ポイント還元や軽減税率の導入を利用しつつ、増税後しばらくしてからの見直しでいいでしょう。

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