ふるさと納税に伴う税収減が実質的に全国で最も高い川崎市は、寄付額を増やすため新たに145の返礼品をそろえ、専用サイトで受け付けを始めた。市内のプロスポーツチームとタッグを組み、川崎に足を運んでもらえるよう工夫を凝らした返礼品も数多くラインアップ。本年度は1億円の寄付額が目標で、他の自治体に税収が奪われる一方だった状況から反転攻勢を図る。
新たな返礼品は、市内に本社や事業所、工場、畑などを有する41事業者が、市の呼び掛けに応じて寄せた。10月から民間のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」と「ふるぽ」で寄付を受け付けている。
全国的な知名度を誇るプロスポーツチームも市の取り組みに協力。魅力的な返礼品の数々に、福田紀彦市長は1日の会見で「全国に川崎の応援団を増やしたい」と自信をのぞかせた。
J1リーグ2連覇の川崎フロンターレはブランド力を生かし、ユニホームを用意。今季在籍する全選手のサイン入りで、10万円寄付した人に贈る。会見に同席した藁科義弘社長は「とてもレア。私も持ってない」と推す。M、L、XLの3サイズ限定各10着で、先着順だ。
男子バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、試合後にマスコットやチアリーダーと一緒に写真撮影ができるペア観戦チケット(寄付額5万円)を用意した。元沢伸夫社長は「(返礼品は)観戦チケットを中心にそろえた。ぜひ試合を見に来て、川崎のグルメなども堪能してほしい」と話した。
このほか、タクシーで臨海部の工場夜景を楽しむプラン(寄付額3万4千円、2時間コースで4人までで参加可)をはじめ、市内事業者が手掛ける和菓子、洋菓子、熟成肉、市内産の野菜なども多数用意した。
市の従来の返礼品は岡本太郎美術館や日本民家園の招待券など19品だったが、返礼品競争が過熱した近年、市税の流出額が急増。2015度は2億円だったが、19年度は全国4位の56億円に膨らむ見込みだ。交付団体は減収分の一部が穴埋めされるが、川崎は政令市唯一の不交付団体のため、実質的な減収額は全国で最も高くなっている。
福田市長は9月、減収分の財政措置を求める要望書を総務相に提出している。1日の会見でも「制度の是正を国に求めるとともに、座して待つのではなく、川崎の魅力を発信する返礼品を数多くそろえていきたい」と意欲を示した。
市は11月にも返礼品を追加する方針。市民サービスの財源が市外に流出している実態を市民により広く知ってもらうよう広報にも努めていくとしている。