「少しでも元気を…」自分を変えた“ファンとの出会い” 自己最高199杯のmiwa似美女【福岡発 売り子名鑑2019】

アサヒビールの「いず」さん【写真:福谷佑介】

売り子を始めたキッカケはテレビで放送された東京ドームの売り子特集

 プロ野球界はレギュラーシーズンが終わり、いよいよポストシーズンへと突入していく。セ・リーグは巨人が、パ・リーグは西武が頂点につき、次は日本シリーズを目指した短期決戦が始まる。ここからの手に汗握る決戦でもファンのお供となるのがビールだ。そして、そこに“華”を添えるのが、10キロを超えるビールのタンクを背負い、スタジアム内で働く各ビールメーカーたちの売り子たちだ。

 10月5日からクライマックスシリーズ1stステージを戦う福岡ソフトバンクホークスの本拠地ヤフオクドームで働く売り子たちにも、それぞれに人間模様がある。“美女どころ”と言われる福岡の売り子を紹介する人気企画「福岡発 売り子名鑑2019」。彼女らの奮闘を知っていただき、残すところポストシーズンのみとなった2019年のプロ野球観戦の楽しみとしていただけたら幸いだ。

 第13回はアサヒビールの「いず」さん、だ。

 現在、福岡市内の大学に通う3年生で、売り子歴3年目となる彼女。球場のファンからは女優の川口春奈さんや歌手のmiwaさんに似ていると声をかけられるという、21歳の美女売り子だ。

 売り子を始めたのは大学1年生のとき。テレビで放送されていた番組で、東京ドームの売り子が特集されているのを見たことが興味を持つキッカケだった。「テレビでやっているのを見て、やってみたいと思いました。そこで売り子という仕事を知りました」。思い立ったら吉日、すぐに売り子の仕事を探して求人に応募した。

「大変そうだけど、キラキラして格好いいなと思いました」。華やかな世界をイメージして飛び込んだ売り子の世界だったが、想像以上に過酷な肉体労働で「最初はめちゃくちゃキツくて……。あまりにキツ過ぎて、最初は3連戦で1回だけとか、月に2、3回くらいしか入れないくらいでした」と振り返る。

アサヒビールの「いず」さん【写真:福谷佑介】

「嬉しいですし、モチベーションになる」というファンとの繋がり

 そんな激務にも関わらず、3年も続けられたのには、1つの転機があったという。「2年目の最初、年間シートで毎日来られるお客様がいたんです。そのお客様に『明日も来る?』と聞かれて。そこから毎日入るようになりました。そのお客様は今でも買って下さっています」。1人の“常連客”との出会いが彼女を変えたという。

 売り子として働く原動力となっているのは、やはりファンとの繋がりだ。「常連さんができてきたこともありますし、3塁側なので東京とか遠方から年に1回しか来られないお客様とか、右翼の外野席から1杯を買うために来てくれるお客様もいて。それが嬉しいですし、モチベーションになってます」という。年に1回しかヤフオクドームに来られないビジターファンが、いつ来てもいいようにと、毎日出勤するようにしているという。

 自己最高で199杯をマークし、1日平均では150から160杯の売り上げを誇るという「いず」さん。働く中で心がけているのは「キツイときにも笑顔でいれることが大事かなと思います」。キツい時でも笑顔を絶やさず、ファンと接すること。多くの杯数を売り上げること以上に、気にしていることだという。

 それには過去のある体験がある。「ファンの人に『キツくても頑張っている姿を見て元気を貰える』と言ってもらえて」。球場でファンからかけてもらった一言。「おこがましいですけど、少しでも見ている人に元気を与えられたらいいなと思っています」。そんな思いも胸に秘めて、彼女は今日もヤフオクドームでビールを売る。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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