母子に寄り添う、再出発 熊本市民病院で周産期支え 関連死遺族と看護師決意

©株式会社熊本日日新聞社

熊本市民病院のナースステーションで、同僚と打ち合わせをする今村唯さん(中央)=1日、熊本市東区
熊本市民病院にフランス菊を植えた宮崎さくらさん、貴士さん夫妻。季節外れの花が1輪だけ咲き「(亡くなった)花梨と愛梨ちゃんが咲かせてくれたのかな」=3日、熊本市東区

 2016年4月の熊本地震で被災し、移転先で今月7日に診療を開始する新熊本市民病院(東区東町)。県の総合周産期母子医療センターとして、難しい症例の赤ちゃんを守る役割を再び担う。ボランティアや看護師として新病院を支える女性たちは「大変な時期の母子に寄り添いたい」と思いを新たにする。

 合志市の宮崎さくらさん(40)、貴士さん(40)夫妻は3日、新病院の花壇にフランス菊の苗を植えた。地震時、市民病院に入院していた次女花梨[かりん]ちゃん(当時4歳)を震災関連死で亡くし、その面影を重ねる花だ。長女柑奈[かんな]ちゃん(10)や、院内保育所の園児11人も手伝った。50株のうち1輪が、季節外れの花を咲かせていた。

 フランス菊は、東日本大震災で長女の愛梨ちゃん(当時6歳)を亡くした宮城県石巻市の佐藤美香さん=氷川町出身=が、災害の記憶を伝えるため全国に広めている。愛梨ちゃんの亡きがら近くに咲いていたという。

 宮崎さんは、重い心臓病があった花梨ちゃんを亡くした後に佐藤さんと交流、種をもらった。自宅で育て、「子どもたちの命を忘れないように」と新病院への植栽を依頼した。「災害時の『命のとりで』として、市民から愛される病院であってほしい」。この日の植栽に参加した大西一史市長ら関係者に、静かに語り掛けた。

 新病院は、「母子に優しい病院」を目標に掲げ、長期入院する子どもの家族が宿泊できる「ファミリーハウス」を3室用意。フランス菊の花壇は、その目の前にある。

 宮崎さんは同ハウスで、掃除などのボランティアも始める。「話す人がいるだけで安心できるから」、求められれば、不安を抱える家族の声に耳を傾けるつもりだ。

  ◇   ◇

 旧病院が使えない間、医療技術維持のため、県内外の34病院に派遣されていた看護師ら約200人も診療開始を前に戻ってきた。

 市民病院のNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務していた看護師今村唯さん(32)もその一人。2016年8月から18年3月まで、長崎県の病院のNICUに派遣されていた。

 前震時は、生後数日の乳児に授乳する母親に付き添っていた。クッションで母子を保護し、揺れが収まると、病棟ロビーに患者や新生児を集め無我夢中で対応に当たった。倒壊の危険から入院患者を転院させた後は、避難所の巡回や東区役所の応援業務に追われた。

 派遣先の佐世保市総合医療センターは、市民病院よりNICUの規模が小さく、小児科の外来と掛け持ちで勤務。「少人数で連携がよく、赤ちゃん一人一人の状態を皆が把握できた」と懐かしむ。

 派遣中、800~900グラムの超低出生体重児で生まれた双子を担当。ショックでふさぎ込み、毎日泣いていた母親にできるだけ寄り添った。退院間際、母親が「あの時はありがとう」と言ってくれたことが忘れられない。

 さまざまな症例を経験して戻ってきた今村さん。「教科書では学べない心のケアは日ごろの心掛けが大事。新病院でも母親たちに寄り添い、子どもの成長を見守りたい」(文化生活部・林田賢一郎)

(2019年10月4日付 熊本日日新聞朝刊掲載)