サスティナブルに生活や観光を楽しもう~フィンランドの首都ヘルシンキの取り組み
環境保全に積極的に取り組んでいる北欧の国、フィンランドの首都ヘルシンキでは、様々なアイデアを駆使したサステナブルな取り組みが行われています。
日本にはない厳しい基準が設けられており、少しの手間を惜しまずに取り組もうという国の姿勢が市民にも受け入れられ、持続可能な環境保護への結果に繋がっています。
ここではヘルシンキのサステナブルな取り組みについてご紹介していきます。
■ヘルシンキでのサステナブルな生活や観光の方法を分かりやすく紹介する「Think Sustainably」
フィンランドの首都で、国内最大の都市でもあるヘルシンキは、白亜の外壁と緑のドームが印象的なヘルシンキ大聖堂、大きな岩をくり抜いて造られコンサートホールとしても利用されるテンペリアウキオ教会、屋台や露天カフェ、買い物も楽しめるカウッパトリなどの観光スポットも有名です。
2018年のSDGs達成度ランキングでは3位に入るなど、環境保全に非常に力を入れており、教育現場での環境教育やリサイクルセンターの整備なども積極的に行われています。
・市が立ち上げた「Think Sustainably」
そんなヘルシンキでは、市が「Think Sustainably」というウェブページを2019年6月に立ち上げました。自治体のサイトとは思えないほどデザインやアイデアも楽しめる内容になっています。
「持続可能な考え~ヘルシンキでの良い生活」
「持続可能なヘルシンキを体験」
「ヘルシンキで持続可能な1日を過ごす3つの方法」
「ヘルシンキの持続可能なアトラクション」
など、ヘルシンキをサスティナブルに過ごす方法が具体的に紹介されており、掲載されている施設へのアクセスも二酸化炭素排出量を最小限に抑えたルートが分かるようになっています。
市民に向けた内容と観光客向けの内容が分かりやすく表示されているので、どちらの角度から見ても楽しみながらサステナブルを理解できる内容となっています。
・サイトに掲載される飲食店の厳しい基準
このサイトに紹介されているレストランやカフェ、バーなどの飲食店は17の環境保全基準のうち、少なくとも10の項目を満たす必要があります。
その項目は次のようなものとなっています。
「エネルギー」
・再生可能エネルギーを使用した地域暖房を使用している
・独自の電気契約を結んでいる場合、使用される電力は太陽光、水、バイオ、または風力エネルギーから供給される
・エネルギー消費を削減するための定量的な目標がある
・照明のほとんどにLEDライトを使用している
「飲食サービス」
・環境保全団体WWF(世界自然保護基金)の持続可能なシーフードガイドに従った「ベストチョイス」のみのシーフードの提供、またベジタリアンやヴィーガンフードのみを提供している場合も基準が満たされる
・ヘルシンキから半径200km以内で生産される野菜や肉など、地元の食品を使用している
・メニューにバランスの取れたヴィーガンメニューが複数用意されている
・敷地内に水道水がある
・オーガニック認証、またはフェアトレード認証を取得した食材を使用し、それがユーザーから見えるところに表示されていること
・ビュッフェなどの食べ残しのメニューは任意団体に寄付されるか、割引価格でアプリケーションを介したユーザーへ直接販売される
「社会的持続可能性」
・長期失業者、フィンランド語に堪能でない人、または障害を持つ人を雇用している
・セクハラ、同性愛嫌悪、その他の差別的行動や不適切な行為を目撃した場合のガイドラインが作成されている
・施設へのバリアフリーアクセスに関する情報がWebサイトに明確に表示される
「その他」
・地域の廃棄物ガイドラインで決められている以上の量のリサイクルを実施する
・持続可能な目標に貢献する環境プログラムや認証を受けている
・公共交通機関の利用だけでなく、徒歩や自転車でのアクセスを勧めている
日本の現在の状況から見ると非常に厳しい内容にも思えますが、環境保全に積極的に取り組むフィンランドの姿勢がこの内容に表れていると言っていいでしょう。
今すぐ同じことをやろうとするのは困難かも知れませんが、決して私たちにもできないことではありません。ひとりひとりの意識を変えるだけで、よりサステナブルな社会を作る大きな一歩に繋がっていくのです。
■ゴミをゼロにする取り組みを行うヘルシンキのレストラン「NOLLA」
※写真はイメージ図です
ヘルシンキの話題のレストラン「NOLLA」は、廃棄物ゼロへ徹底的に取り組むレストランとして世界中から注目を集めています。
まず、この店のキッチンにはゴミ箱がありません。
どうしてもゴミになってしまう肉や魚の骨、野菜の皮、また卵の殻といったものについては、すべてコンポストで堆肥化され、生産者へと配られています。
メニューには地元の食材を使用しており、食品ロスに配慮し、通常より少なめのメニューも用意されています。
また事前にリクエストすれば、ベジタリアンやヴィーガンメニュー、アレルギーに対応したメニューもオーダーできるようになっています。
さらに徹底しているのは使い捨てのプラスチック、プラスチックを使用して包装された食品、ラップフィルム、フリーザーバッグ等は一切使用がなく、サプライヤーと直接連携してパッケージの再考、拒否、管理を行っています。
また店内で使うナプキン、スタッフのユニフォームも再利用できるものとなっています。
また、「NOLLA」が発行するギフトカードはケシの実が入った堆肥化可能な紙で作られており、使用後は自宅の庭などに埋めればゴミにならないという環境に優しい素材で作られています。このギフトカードは食事を楽しめることに加え、持続可能な贈り物としても人気を集めています。
ヘルシンキ都市戦略2017年~2021年の目標は、2035年までにカーボンニュートラルなヘルシンキを作る、と定められています。
それを達成するためには、温室効果ガスの排出量を1990年のレベルから少なくとも80%削減する必要があります。
結果として、2017年ヘルシンキの排出量は居住者が約15万人増えたにもかかわらず、1990年よりも24%減少しており、国や自治体、企業だけでなく、市民のひとりひとりが環境保護に対する意識が高いことが分かります。
ヘルシンキの取り組み方を見ていると、日本はまだまだ環境問題に対する危機感が浸透していないことが分かります。
国や自治体、企業のアクションも重要ですが、私たち消費者も「未来を考えた商品選び」を積極的に行っていくことが大切です。