ソフトバンク、楽天のCS1st“初体験”は誰? 森原、辰己、甲斐野、周東らにチャンス

ソフトバンク・甲斐野央(左)、楽天・辰己涼介【写真:藤浦一都、荒川祐史】

楽天は森原、ドラ1辰己、石橋らに出場のチャンスが

 5日より「2019 パーソル クライマックスシリーズ パ」が開幕する。1軍の登録人数は29人であることを考えると、単純計算でこの舞台に立つことができる選手は3チーム合わせて87人ということになる。そこで今回はこのクライマックスシリーズが自身初のポストシーズンの試合になることが予想される主な選手を取り上げたい。なお、今季新加入の外国人選手は除外している。

【楽天】

 まずはシーズンを3位で終えた楽天。投手陣では森原に注目したい。ルーキーイヤーの2017年にもチームはクライマックスシリーズに進出したものの、自身は開幕から蓄積した疲労の影響もあって登板の機会を得ることができなかった。ただ、3年目の今季は序盤から好救援を積み重ね、シーズン終盤にはセットアッパーとしてフル回転。64試合に登板し、29ホールド、防御率1.97といずれもキャリアハイの成績を残した。

 ファーストステージの舞台となるヤフオクドームでは5試合に登板し、防御率5.40。シーズン通算で被本塁打はわずか3本だったが、そのうち1本は5月3日に同球場でグラシアルに被弾した逆転3ランである。自身初のプレーオフの舞台でリベンジを果たしたいところだ。

 4年目の石橋は大きな意味のあるクライマックスシリーズになりそうだ。2017年は1軍登板がなく、森原と同じく登板機会を得ることはできず。翌2018年は育成登録からのスタートに。同年7月に再び支配下選手として再契約となったものの、苦しいシーズンが続いたことに変わりはなかった。ただ、今季は開幕1軍を勝ち取り、5月からは先発としてチームに定着。力強い直球とカットボールを軸に安定したゲームメイクを見せ、チーム2位の8勝を挙げた。

 ソフトバンクに対しては4試合に登板し、防御率2.57の成績。先発陣にはエース・則本昂、勝ち頭の美馬、岸などの優れた先発投手が名を連ねるだけに、クライマックスシリーズでの先発マウンドが確約されているわけではない。どの場面でマウンドに上がるのか、石橋の伏兵としての活躍にも期待大だ。

 一方、野手陣では早くも大舞台を経験するルーキーが目立つ。ドラフト1位ルーキー・辰己は、代打や代走を含めた124試合に出場したものの、打率.229とプロの壁にはね返された。ただ、9月に限れば月間打率.298の好成績を残しており、9月3日と4日のソフトバンク戦では、2試合連続本塁打を放っている。ファーストステージ突破のカギを握る選手の1人になりそうだ。同じくルーキーでは太田と渡邊の出場も予想される。今季初めてプロの世界を経験したが、また一味違った試合になることは間違いない。

ドラフト1位甲斐野、周東ら“新戦力”活躍に期待

【ソフトバンク】

 リーグ制覇にあと一歩届かなかったソフトバンク。投手陣ではルーキー・甲斐野には特に注目したい。開幕から1軍のブルペンに抜擢されると、そのままチーム最多の65試合登板に登板し、フル回転でシーズンを完走。防御率は4.14ながらも、アマチュア時代からも定評だった150キロ後半の豪速球がプロでも通用することを証明した。東洋大時代はリーグ3連覇も経験しており、プレッシャーのかかるマウンドの経験も十分。プロの舞台でも、クライマックスシリーズを制する好投に期待したい。

 2015年ドラフト1位の4年目・高橋純も、今季が自身初のクライマックスシリーズとなる。5月に2年ぶりとなる1軍のマウンドに立つと、そこからブルペン陣の一角として定着。6月、7月には2か月連続で月間防御率が1点台を記録するなど、強力な救援陣が揃う福岡ソフトバンクで信頼を勝ち取った。新進気鋭の右腕が短期決戦の中でチームを勢いに乗せられるか。

 一方、野手陣では牧原には期待せずにはいられない。昨季はシーズン中盤からスタメンに定着してチームをリーグ2位に導きながらも、自身はシーズン最終盤のケガででまさかの離脱。クライマックスシリーズの舞台には立つことができなかった。

 今季はその悔しさを晴らすべく自己最多の114試合に出場。主力に怪我が続出し、チームが苦しい状況にある中で、本職の二遊間だけでなく、外野も守るユーティリティーさを見せた。昨季、立つことができなかった首位・西武との決戦の舞台。まずはそこに至るために、楽天とのファーストステージに照準を絞ってくるだろう。

 プロ2年目の周東佑も自身初のクライマックスシリーズとなる。今季、念願の支配下登録を勝ち取ると4月6日の1軍登録以降、一度も登録を抹消されることなく1年間を戦い抜いた。主力に数多くの育成出身選手がいる中で、新たな「育成の星」として輝きを放った。

 持ち味はその驚異的ともいえる俊足だ。スタメン出場が少ない中で、主に代走としてリーグ5位の25盗塁を記録。盗塁成功率も.833と安定していた。短期決戦となるクライマックスシリーズの戦いでは、1点が試合の行方を左右することは言うまでもない。昨季は同じ育成出身の甲斐の「甲斐キャノン」がポストシーズンの話題を呼んだが、今度は周東の走力がクライマックスシリーズ突破に向けた重要な要素となるかもしれない。

 毎年数多くの劇的な展開を呼んでいるポストシーズンの戦い。今年はどのようなドラマを見ることができるのか。また、それを巻き起こすのは、やはり大舞台慣れした熟練の主力か、はたまた可能性十分の若手か、ついに大舞台の出番を勝ち取った苦労人か。大詰めに入った2019年シーズンの戦いから目が離せない。(「パ・リーグ インサイト」吉田貴)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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