WEC富士:トヨタ、母国でフロントロウ独占。2番手得た小林可夢偉、4輪脱輪の判定も「大きな問題にならず、内容に満足」

 2019/2020年WEC世界耐久選手権第2戦富士の公式予選が10月5日、富士スピードウェイで行われ、LMP1クラスに参戦するTOYOTA GAZOO Racingはセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組8号車トヨタTS050ハイブリッドが今季初のポールポジションを獲得。僚友7号車トヨタTS050ハイブリッドが2番手につけ、母国レースでグリッド最前列を独占した。
 
 WECの予選は最終戦ル・マン24時間レースを除き、1台につきふたりのドライバーがそれぞれアタックを行い、ふたりのベストタイムの平均値を割り出して決勝のグリッドを決定する方式が採られている。
 
 公式予選までに計3回行われたフリープラクティスのすべてでトップタイムをマークした8号車トヨタは、この予選に一貴と新加入のハートレーを起用。一方、前戦までに獲得したポイントに応じてクルマを意図的に遅くする“サクセス・ハンディキャップ”で、1周あたり最大1.4秒のハンデを負う7号車トヨタはホセ-マリア・ロペスと小林可夢偉がアタッカーを任された。

 定刻13時40分に始まった予選では、まず8号車をドライブする一貴が全車中唯一の1分24秒台に入る好タイムをマークする。その後、8号車はピットインし、ドライバー交替をして後半戦へ。

 一貴の後を受けたハートレーもチームメイトと同様に計測1周目からアタックを行うが、最終セクターでトラフィックに引っかかってしまう。しかし、WECチャンピオン経験を持つハートレーは冷静にこれを対処。照準を次のラップに切り替え、2周目に再アタックを決めてみせた。
 
 これでアベレージタイムを1分25秒205とした8号車は、トヨタの母国ラウンドとなる富士でポールポジションを獲得することになった。また、ハートレーにとってはトヨタ加入後初めての予選アタックで、さっそく最速の証を手にすることとなった。

「富士でポールポジションを獲得できてとてもうれしいです。TS050ハイブリッドのポテンシャルのすべてを引き出し、ミスのないアタックができたと思います」と語るのは、予選最速ラップを刻んだ一貴。

「予選開始前には、ノンハイブリッド勢がどれほどのタイムを出してくるか予測できなかったので心配でしたが、それだけにポールポジションは格別です。ホームレースを最前列からスタートできるのは良いことですし、6時間そのポジションを守れるように頑張ります」

 ハートレーも「TOYOTA GAZOO Racingで初めてとなるポールポジションを獲得できて最高の気分だ」と予選の成功を喜ぶ。
 
「一貴が1周目で素晴らしいタイムを叩き出したから、僕も1周目から全開で行ったのだけど、最終セクターでコース上の混雑に阻まれてしまい、もう1周アタックせざるを得なかった。それでもポールポジション獲得には充分なタイムをマークができたよ」

■「トップ3以内に入れるかどうか確信できなかった」とホセ-マリア・ロペス

2番手グリッドから決勝に臨むTOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッド
予選終了後、イベント広場での玉入れに参加した中嶋一貴とブレンドン・ハートレー

 走り始めから好調の8号車に対しサクセス・ハンディキャップの影響もあり、やや劣勢の7号車は予選前半、ロペスが1分25秒639というタイムでチームメイトに次ぐ暫定2番手につけた状態で可夢偉にバトンを託す。
 
 可夢偉はフルスピードを発揮できないマシンで渾身のアタックを行うが、このラップが4輪脱輪(トラックリミット違反)と判定されタイムが抹消に。さらに、同じタイミングで3番手を争っていたチームLNTの6号車ジネッタG60-LT-P1・AERがスピンを喫しコース上でストップしたことで、セッションは残り3分半ほどを残して赤旗が提示されてしまう。
 
 この時点でふたりのタイム計測が完了していない7号車はセッション再開後再びコースへ出ていく。可夢偉はすでにピークを過ぎたタイヤで再度アタックをすることになったものの、見事1分25秒台のタイムを記録して2番手を死守。8号車とともにフロントロウを独占することに成功した。

 予選後、可夢偉は「8号車のポールポジション獲得を祝福したいと思います。僕たち7号車もベストを尽くしましたが、課されたサクセス・ハンディキャップの影響で期待以上の結果にはなりませんでした」とコメント。
 
「ポールポジションは難しいと分かっていたので、今日の結果は驚くことではないと思っています。最初のアタックで4輪コースオフの判定をとられましたが、結果的に大きな問題にはならなかったので、予選の内容に満足しています」とした。

 また、ロペスも「7号車がサクセス・ハンディキャップによって、8号車のスピードに追いつくことが難しいことはわかっていた」と語り、リスクを冒さず慎重に走ったという。

「特に金曜日の結果から、トップ3以内に入れるかどうか確信できなかったこともあり、今日の予選は順調に周回をこなすことができ、結果に満足している。最終的に、我々チーム2台がグリッド最前列を独占し、非常に良い結果になった」

 TOYOTA GAZOO Racingは今回の予選で、昨シーズンから続く連続ポールポジション記録を『9』とし、決勝では7連勝と富士での大会4連覇を狙う。6時間の長丁場となる6日(日)の決勝は11時にスタートが切られる予定だ。

セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組8号車トヨタTS050ハイブリッド
7号車トヨタTS050ハイブリッドをドライブした小林可夢偉
TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッド

© 株式会社三栄