【映画レビュー】 不幸と狂気のバーゲンセール!!名悪役ジョーカーを生んだのは街の環境だった!!/映画『ジョーカー』

現在公開中の「バットマン」シリーズの人気悪役"ジョーカー"の誕生物語スピンオフ映画『ジョーカー』

過去作品を観てなくてもついていける一元さん歓迎フォーマット。それでも原作ファンや過去シリーズを知ってる人ならニヤリな裏設定もチラ見せ。コミック原作とは思えないダークトーンのシリアルドラマに仕上がっています。

環境が人を作る!!

舞台は、市の衛生局のストライキにより、街中ゴミとネズミだらけのゴッサム・シティ。主人公は、体もメンタルも病んでる母親と二人暮らしのアーサー。夜は母の介護。昼は派遣ピエロ会社のピエロで何とか食い繋いでいる状況。でも本当はコメディアン志望。ただ、ネタ帳を見てる限り、彼の持ちネタは絶望的につまらないんです

本人も脳の損傷から、緊張したり、責められたりすると笑ってしまう病気の持ち主。場違いなタイミングで爆笑してしまうんです。これがまた切ない。辛い状況でも悲しみの涙を流しながらも、笑ってしまうんです。そんな中、街で量販店の呼び込みピエロをしているとクソガキたちに悪ノリでフルボッコの目に。見かねた同僚から「自分の身は自分で守れ」と銃のサプライズプレゼント。これがマズかった。小児病棟へ派遣されて、ダンスパフォーマンス中に銃が床へゴトリ。ソッコーでクビに。さらに悪い事は続くもので、向精神薬を処方してくれてたソーシャルワーカーのカウンセリングも市の福祉予算削減で閉鎖。

お先真っ暗と地下鉄で帰宅中のこと。絡んできたビジネスマンたちを銃で撃ち殺しちゃう。マスコミにより、殺しちゃったビジネスマンたちは大手会社の社員と判明。社長の「仮面に隠れることしかできない不要なピエロ」発言に、富裕層に不満マンタンの低所得者たちがブチギレ。マスコミは犯人のピエロ(主人公)を非難。所が、低所得者たちの間でピエロマスクが大流行り。そんな状況の中で、自分は人気者と勘違いする主人公。憧れのテレビ番組の司会者や同じフロアに住んでいるシングルマザーの女性など、周辺人物も巻き込んで、悪い事の連鎖がフル回転。どんどん堕ちていく主人公は、果たして何をやらかしてしまうのか?!

街自体が登場人物!!

ゴミまみれの街。街中の壁や電車の社内まで落書きだらけ。混沌とした街をグレーの色調で描写。 ゆえに主人公のカラフルメイク&独特ファッションがより強調。クライマックスの街で起こる暴動はまさに公民権運動がフラッシュバックします。それでいて、金持ちたちが出入りする場所はどこも格調高くエレガント。街の人々の貧富の差というギャップを見事にビジュアル化してます。

どんどん狂っていく主人公!!

アメコミ原作というバックボーンにも関わらず、物語はとにかくダーク。今となってはネタにもされるDCコミック原作映画あるあるの"暗くてリアル路線"。なので、誰にでもオススメできるエンタメなスカッと爽快なんて事はありません。冒頭から不幸続きの主人公。音楽により主人公の感情を表現した演出もグッド!!

前半は、感情移入してしまうのですが、行動や発想が斜め上。自分に都合の良い妄想の数々で感情移入ストップ。その共感の拒絶こそジョーカーらしいとも言えますが、不幸と狂気のバーゲンセールは退屈。あとは、観客置いてけぼりで、ただただ暴走していく主人公。

原作ファンへ!!

主人公が地下鉄で殺しちゃったビジネスマンたちの勤め先はウェイン産業。バットマンであるブルース・ウェインの会社です。この頃の社長はブルースの父=トーマス・ウェイン。子供時代のブルースや執事のアルフレッドも登場。「もうこの頃に、バットマンとジョーカーの因縁が始まっていたのか!!」という原作ファンのハートを持ち上げてくれる設定。

ただ、本作のジョーカーは原作にある愉快でクレイジーな知能犯のイメージは総シカト。次に何が出るかお楽しみという魅力は皆無。なので、ジョーカーのキャラが好きな方には、期待外れかも。勿論、『ダークナイト』のヒース・レジャーやティム・バートン版『バットマン』のジャック・ニコルソンとは全く別物です。さらに言うと、みんなが興奮した予告編から想像できる物語のみといった印象。驚きやハラハラドキドキはほぼ皆無。ジョーカー誕生までの重たいヒューマンドラマをどっしり見せつけられます。そういう映画と理解して寛容な気持ちで劇場へ行って頂きたいです。何はともあれ自らの目で確認してもらいたい映画『ジョーカー』は、現在、全国公開中です。

『ジョーカー』

監督/トッド・フィリップス

主演/ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ

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