400勝、365完投、4490奪三振…金田正一氏のアンタッチャブルな記録の数々

10月6日に逝去した金田正一氏【写真:細野能功】

今後破られることがない記録が多数、通算投球回は5526回2/3

 10月6日に逝去した金田正一氏は、400勝という前人未到の記録を残した。これは王貞治氏の868本塁打、張本勲氏の3085安打などとともに、今後破るものが出てきそうにない記録だ。しかし、それ以外にも金田正一氏はアンタッチャブルな記録をたくさん残している。400勝も含め、これらを振り返ろう。

○通算勝利数 400勝 史上1位

 2位の米田哲也氏が350勝。平成以降では、NPB通算200勝投手は214勝の山本昌氏だけ。現役では、ヤクルトの石川雅規投手の171勝。金田氏の半分の200勝に到達する選手さえ当面出てきそうにない。まさに空前絶後の記録だ。

○通算敗北数 298敗 史上1位

 金田氏が1950年から1964年まで在籍した国鉄スワローズはこの間、一度も優勝していない。そんな弱小球団だけに、敗北数も多かった。敗北数2位も米田哲也氏の285。現役ではヤクルトの石川の163敗であり、この記録もアンタッチャブルになっている。

○通算完投数 365 史上1位

 2位はスタルヒン氏の350。現役では松坂大輔投手の72が1位。投手の分業が進み、先発完投が激減している中、この記録も今後、更新する投手は出てこないだろう。

○通算投球回 5526回2/3 史上1位

 入団1年目から164回2/3を投げ、翌年から14年連続で300イニング以上を投げた。現役ではヤクルトの石川の2794回2/3。今季NPBの最多投球回数は、中日・大野雄二投手の177回2/3であり、この記録もアンタッチャブルだ。

投手としての本塁打数も史上1位

○連続20勝 14年 史上1位

 入団2年目の1951年から国鉄を退団する64年までの14年間、すべて20勝以上。これに続くのは西鉄・稲尾和久氏が56年から63年まで記録した8年連続。3位は中日・杉下茂氏が50年から55年まで続けた6年連続。通算20勝回数でも金田氏は14回で1位、2位は南海、巨人の別所毅彦氏、西鉄・稲尾氏の8回だから断トツだ。20勝投手は2013年の楽天・田中将大投手の24勝を最後に出ていない。この記録も空前だ。

○通算奪三振 4490個 史上1位

 2位は米田哲也氏の3388個。金田のK9(9回あたりの奪三振数)は、7.31。昭和中期の水準では高かったが、今季のNPBはリーグ平均のK9が7.65。現代のエース級の投手の多くは9.00以上のK9だ。奪三振率なら金田氏を大きく上回るが、投球回数が少ないので、金田氏の記録には遠く及ばない。現役最多はロッテ涌井秀章投手の1688個だ。

○投手としての本塁打数 38本 史上1位

 金田氏の通算打撃成績は、1053試合2054打数406安打38本塁打177打点、打率.198。打率は低いが、1950年から60年まで11年連続で本塁打を打っている。代打などで109試合に出場するなど、打者としても手ごわかった。投手としての本塁打数2位は、南海、巨人の別所毅彦氏の35本。今季NPBでは投手の本塁打は0本、現役では阪神・藤波晋太郎投手、秋山拓巳投手の2本が最多であり、この記録もアンタッチャブルになっている。

○左投手の完全試合 史上唯一

 完全試合は史上16回記録されているが、左投手では金田氏が1957年8月21日に中日球場の中日戦のダブルヘッダー2試合目で記録したのが唯一の記録。

○兄弟で100勝以上 史上唯一

 兄・金田正一氏が400勝、弟・金田留広氏(昨年10月2日逝去)が128勝。これもNPB史上唯一の記録だ。兄弟での528勝は、野口明氏(49勝)、野口二郎氏(237勝)の286勝を大きく超えて、これも史上1位。

 金田正一氏のアンタッチャブルな記録は、子細に見ればさらに増えていく。昭和の野球は現在とは大きく異なってはいるが、それでも金田正一氏は「不滅の大記録」を多数残した選手として野球史に刻まれるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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