長崎くんち 出演者と地域 融合に努力 進む高齢化、人口流出 SNSで龍衆募集も

稽古に励む籠町の龍衆=9月、長崎市西小島1丁目、大徳寺公園

 諏訪神社(長崎市上西山町)の秋の大祭、長崎くんちは7日、開幕する。江戸時代前期に始まり、奉納踊りは国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統の祭りだが、くんちを支える市中心部の踊町にも高齢化や人口流出の波が押し寄せている。町外の出演者が多くなっており、各踊町は出演者と地域の融合に努めるなど伝統維持のためにさまざまな工夫をしている。
 今年の踊町は今博多町、魚の町、玉園町、江戸町、籠町の5カ町。龍踊(じゃおどり)の「本家」として知られる籠町は、龍を操る龍衆を今回初めて公募した。
 年初は龍衆を確保できていたが、2月ごろに仕事の都合などを理由に5人が辞退した。3月以降、会員制交流サイト(SNS)や生活情報紙の広告などで龍衆を急きょ募集し、6月の小屋入り前に46人を確保した。
 従来も町外の若者らに声を掛けて龍衆をそろえてきた。龍衆らは稽古場に隣接する神社を清掃。籠町龍踊保存会は夏祭りを開いて住民と交流し、地域との融合に努めている。
 江戸町は演(だ)し物のオランダ船(せん)に出演する26人中、町内出身・関係者は10人。「くんちに出演したい」という町外の希望者を受け入れて人数を確保しているが、「町の一員」という意識を養うために青年部入会を条件としている。出演者は地域の清掃や夜間警備、商店街のイベントなどに参加し、住民と共に汗を流す。
 一方、川船を奉納する魚の町は、船を引く根曳(ねびき)16人全員が町内関係者。以前の奉納時に囃子(はやし)などで出演経験のある町内関係者らに声を掛け、そろえることができた。出演者は極力、町内関係者で固めるようにしている。
 本踊(ほんおどり)を奉納する今博多町は、町外の日本舞踊の師匠らと「結納」と呼ばれる出演契約を交わすのが伝統。ただ、踊りを担当する花柳流の師匠の方針で、踊子(おどりこ)には町内関係者を入れている。今回は6人の踊子のうち1人が町内関係者だ。
 獅子踊を奉納する玉園町は1983年以降、西彼長与町の吉無田獅子舞保存会と「結納」を交わしている。前回奉納時(2012年)の翌年から、演し物について率直に意見交換できる関係をつくろうと、自治会と保存会の幹部が親睦を深める交流会を年に数回開くようにした。
 長崎伝統芸能振興会踊町委員会副委員長の山下寛一さん(65)は「伝統を維持するために踊町が努力しているのは当然」とした上で、「町内外を問わず、単に思い出づくりとして出演するのは好ましくない。出演者は各町が大切にしているこだわりや思いを引き継ぎ、町に愛着を持ってほしい」と話している。

踊子として参加する花柳流、地方を務める四芳会と今博多町の「結納」=5月、長崎市筑後町、セントヒル長崎

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