地方の人口減抑制にも 日本総研 エクスパート 三輪泰史氏 最先端技術を導入するメリット

三輪泰史氏

 スマート農業に詳しい日本総合研究所の三輪泰史エクスパートに、最先端技術を導入するメリットなどについて聞いた。

 -スマート農業が注目される背景は。
 国が農業の成長産業化を促し、農家は「もうかる農業」を実現しやすい環境になっている。
 一方、離農や高齢化による労働力不足によって、チャンスを生かし切れていない一面もある。例えば、国産品の需要が高まっている半面、輸入品が増えている現状がある。2015年の農林業センサスによると、国内の耕作放棄地は42.3万ヘクタールで滋賀県の面積を上回るほど余っているが、人手やノウハウを使えず増産につなげられていないのだ。労働力と知見を合わせたスマート農業を導入し人手不足を補うことで、規模拡大と省力化が期待される。

 -長崎県は中山間地域が多く、小規模農家が多い。スマート農業の導入で長崎県、地方の農業はどう変わると考えるか。
 昨年からスマート農業の潮目が変わってきている。大型の無人トラクターなど、従来は大規模農業をターゲットにした技術がメインだったが、農業用ドローン、農業ロボット、小型センサーなど中小企業、中規模農家をターゲットにしたものが出ている。ブームの第2波が来ている印象だ。
 私が実証実験に携わっている栃木県では20~30代の新規就農者が増えつつある。かつては新たに農業の分野に飛び込むとなると、過去の経験をリセットして10年、20年かけて農業を学ぶ時代だったが今は違う。むしろ、最先端のハイテク技術を使いこなせるスキルが求められており、これまでの経験を生かすことができる。農業を志す門戸が広がり、地方の人手不足、ひいては人口減を抑制する鍵となり得る。

 -スマート農業の導入は期待も大きい一方、コスト増や機器を使いこなせないなどの課題もある。最先端技術を扱えない農家が取り残されないか。
 農林水産省の審議会で私が意見したのは、スマート農機は一家に1台ではないということ。地域ぐるみで機器を共有し、使いこなせない人は若い人たちに作業を委託すればいい。コスト増の問題も解消できる。こうした共有をできる仕組みが理想だし、現在それを実現するための分岐点にあると思う。

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