佐々木亮介「RAINBOW PIZZA Delivery Tour 2019 FINAL」東京公演!「まだまだ行けそう!」

10月2日、 佐々木亮介が「RAINBOW PIZZA Delivery Tour 2019」のファイナルを渋谷WWWで開催した。 今回のツアーはシカゴと東京の2か所で制作された『RAINBOW PIZZA』のリリースに伴い、 9月1日の京都紫明会館を皮切りに6公演が行われたもの。 この日は東京編にプロデューサーとして参加したROTH BART BARONの三船雅也をはじめとしたゲストも加わり、 現在の佐々木の音楽に対する自由なマインドを体現する一夜となった。

いつもの皮ジャンではなく、 チェックのロングシャツを着て、 レッドアイのグラス片手にステージに登場した佐々木は、 リラックスした表情で一曲目の“Fireworks”を歌い始める。 この日のサポートはマニュピレーター/キーボードにMOP of HEADのGeorge、 ドラムにSANABAGUN.の澤村一平というベースレスの編成で、 同期を用いたライブを展開。 向井太一やiriのサポートも務めるGeorgeと、 ジャズやヒップホップを基軸にグル―ヴィーなリズムを叩きだす澤村という人選からして、 a flood of circleでのロックモードとは異なるが、 佐々木はトレードマークのグレッチを手にし、 ディスコファンクな“Just 1 Thing”では「ギター、 俺!」とギターソロを披露するなど、 このミックス感が抜群に面白い。

序盤はチャンス・ザ・ラッパーらの作品に関わるエンジニアのL10mixeditとともに制作された『RAINBOW PIZZA』シカゴ編の楽曲を中心に進み、 トラップのビートや三連符のフロウを盛り込んだり、 “Bi-Polar Tokyo”ではクラウドラップばりの狂騒的な盛り上がりを見せたが、 それでもやはり佐々木はラッパーになろうとしているわけではない。 MCでは自ら「謎のアルバムを作っちゃって、 何じゃこりゃ?って思った人もいるだろうけど、 何でもいいから楽しい夜にする」と語ったように、 彼はただ音楽を楽しみ、 前進したいだけなのだ。

実際に、 中盤では『RAINBOW PIZZA』の世界観からは一旦離れて、 アコースティックコーナーへ。 ブルージーな“Blanket Song”に続いて、 THE KEBABSの“Cocktail Party Anthem”、 「もともとは初めて一人で歌うために作った」というa flood of circleの“月面のプール”といった自身のバンドの楽曲や、 ビヨンセのカバー“If I Were A Boy”といった多彩な選曲で楽しませる。 さらには、 「来てもらえたら、 何か一緒にやろうって話をしてた」というイマイアキノブが急遽ゲストとして登場。 イマイの“いまもギターを”をデュエットで歌い、 息の合った掛け合いを見せると、 場内は大歓声に包まれた。]

再びGeorgeと澤村がステージに戻ると、 ここからは同期なしの、 アコギ、 生ドラム、 シンセベースという編成で、 マーク・ロンソンの“Uptown Funk”、 ウィルソン・ピケットの“Land Of 1000 Dances”をカバー。 シンプルなアンサンブルだからこそのソリッドなグルーヴと、 佐々木のヴォーカリゼーションが際立ち、 “Strange Dancer”ではダンサブルなビートに体を揺らすオーディエンスの姿が目立った。

ライブ後半戦からは、 満を持して三船が参加。 この日は佐々木の誕生日ということもあって、 三船はプレゼントを持って登場し、 ハッピーバースデイを合唱するという和やかな雰囲気の中、 まずは挨拶代わりにROTH BART BARONの“HEX”を披露。 佐々木の男臭いしゃがれ声とは異なる、 三船の透明感のある歌声が、 美しいコントラストを作り上げる。 「この曲で出会えた」と三船が語ったように、 『RAINBOW PIZZA』同様L10mixeditがミックスを担当したこの曲は、 2人を繋いだ曲であり、 そんな曲の歌い出しが〈僕らはいつかきっとどこかで出会うだろう なんの前触れもなく〉だというのは、 何とも出来過ぎた話だ。

ここからは『RAINBOW PIZZA』東京編の楽曲を中心に進み、 サイケデリックな“Game Over”から一転、 “Sofa Party”では佐々木と三船が2MCのような形で盛り上げ、 佐々木はフロアに降りてオーディエンスとともに合唱。 “大脱走”や“The Night Of Starfish”といった『大脱走E.P.』の楽曲も挟みつつ、 「タイム・トゥ・ロックンロール!」の掛け声とともに始まった“Snowy Snowy Day,YA!”では言葉通りロックンロールに駆け抜ける。 「生きてるって感じです。 ありがとう」、 「すげえ仲間に出会えました」と感慨深げに語ると、 最後に演奏されたのは、 ゴスペル風のビッグなコーラスに包まれる“We Alright”。 〈どんだけ間違っても どんだけはみだしても 味方でいるぜBaby〉という歌詞とともに、 佐々木と三船がステージ中央で肩を組んだ瞬間は、 間違いなくこの日のハイライトだった。

本編のみで約2時間という濃密なステージを終え、 アンコールでは「もうやる曲がない」と笑い、 三船も交えた4人でもう一度“Fireworks”を披露。 歌い終えた佐々木が思わず口にした「まだまだ行けそう!」という言葉は、 嘘偽りない本心だったに違いない。

text by 金子厚武

Photo by VIola Kam (V'z Twinkle)

© 有限会社ルーフトップ