素材・エネルギー産業の温暖化対策で電力1位は九州電力:WWFが発表

WWFジャパンはこのほど、素材・エネルギー産業に関する日本企業6業種・42社に対する温暖化対策の調査結果を発表した。総合では鉄鋼業の東京製鉄が1位、電気・ガス業のうち電力会社では最上位の九州電力が重要7指標のうち2指標で満点を獲得するなど優れた評価を得た。ただし、世界的な温暖化対策のパリ協定に沿った長期ビジョンを掲げていたのは東京製鉄など上位の3社のみ。WWFは、早急に国際社会の歩調に合わせた温暖化対策を進めるべきだと提言している。(いからしひろき)

この温暖化調査は2014年に開始され、今回で11回目。

WWFジャパンは、「電気・ガス業」、「石油・石炭製品」、「鉄鋼」、「非鉄金属」、「金属製品」、「鉱業」の6業種に属する42社について、《目標および実績》《情報開示》の2つの観点による21の指標で地球温暖化対策を点数化し、評価した。

業種ごとの傾向をみると、「石油・石炭製品」および「非鉄金属」が、《目標・実績》《情報開示》ともに高得点なことから、それぞれ平均点を伸ばした。

一方、自社の温室効果ガス(GHG)削減目標を持たないなど《目標・実績》の得点が著しく低い「鉄鋼」および「鉱業」は、ともに低調な結果だった。そんな中で「鉄鋼」業の東京製鉄が最高得点(83.3点)を獲得。21指標のうち特に重要な7指標(※)のうち5指標で満点だった。

「電気・ガス業」、「金属製品」は、《情報開示》では比較的高スコアを出した。特に国内でのGHG排出に大きな責任を持つ「電気・ガス」業では、1位が東京ガス、2位が九州電力。九州電力は電気では最上位(全体9位)で、《情報開示》で高得点を獲得。重要7指標では2つの指標において満点で、これは電力10社では九州電力のみの優れた特徴だ。

ただし、6業種すべてにおいて「長期的なビジョン」や「再生可能エネルギーの導入目標」を掲げる企業が非常に少なく、パリ協定に沿った長期ビジョンを掲げていたのは東京製鉄、東洋製缶グループHD、フジクラの3社のみだった。

WWFジャパンは、国際社会の歩調に合わせた温暖化対策を進めることが事業にとって有益で、そうした戦略や覚悟を明確に示す企業が機関投資家や顧客企業から選ばれると提言。そのためには政府が目標を引き上げ、政策的支援の厚みを増すなどして、各企業の底上げを図ることが急務だとしている。

※長期的なビジョン、削減量の単位、省エネルギー目標、再生可能エネルギー目標、総量削

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