イオン、太陽光発電の「PPAモデル+自家消費」でRE100を加速

イオンは、事業者に店舗の屋根を提供して太陽光発電によって得られた電力を自家消費する「PPAモデル」と呼ばれる手法を約200店舗に導入し、再生可能エネルギーのみでの事業経営「RE100」の実現を加速する。同社は昨年3月に「RE100」に加盟し、2050年までに店舗で排出するCO2等をゼロにすることを目指している。このスキームにより、同社は初期投資なしに太陽光発電の電力を自家消費できる。今年12月にまず滋賀県の「イオンタウン湖南」に1.2MWの太陽光発電設備を設置し電力の自家消費を開始する予定だ。(環境ライター 箕輪弥生)

「PPAモデル」「Power Purchase Agreement(電力販売契約)」は、事業者が電力需要家の屋根や敷地などのスペースを借りて太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電力を電力需要家に販売する事業モデルだ。一般的に契約終了後、発電設備は、契約相手に無償譲渡される。

出展:イオン

イオンは店舗の屋上などを発電事業者に提供して太陽光発電装置などを設置し、発電した電力を店舗で自家消費し、消費した電気料金分を事業者に支払う。この仕組みにより同社は初期投資をせずに設備を導入でき、発電設備の保守点検の手間や運用費用もかからない。

「PPAモデル」は米国では太陽光設置の6割以上のシェアを占めるビジネスモデルとして広く普及している。日本でもFIT(固定価格買取制度)に頼らない手法として注目されている。特に自然災害の多発する昨今では、独立型電源としての活用や、蓄電池などと組み合わせた電気自動車などの充電ステーションへの活用も期待されている。

イオンはこのPPAモデルの導入の第1弾として、イオンタウン湖南(滋賀県湖南市)の屋根を発電事業者であるMULユーティリティーイノベーション(MUI・千代田区)に提供し、発電された電力を自家消費する。今後も同様の手法を大型商業施設のほか、グループ各社の約200店舗に導入する予定だ。

自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネージャーは「PPAモデルはCO2削減とコスト削減の両方のメリットを得られる仕組みだ」と評価する。また、「FIT売電ではCO2排出量をゼロで算定できないのに対して、自家消費であればCO2排出量をゼロで算定できる」、「RE100の基準でもFIT売電ではカウントできないが、この仕組みであれば自家消費分を自然エネルギーの電力使用量としてカウントできる」と説明する。

小売業最大手のイオンが使う電気は日本の消費電力の1%に相当するほどだ。これまでも店舗の屋上や側面などに約65MWの太陽光発電装置を所有してきたが大半はFITで販売していた。

「RE100」に加盟し、2050年までに店舗で排出するCO2等を総量でゼロにすることを目指す同社にとって、今回のPPAモデルの導入は、目標達成を加速させる取り組みとなる。

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