新生イエスの「ロンリー・ハート」一世を風靡したオーケストラル・ヒット! 1983年 10月8日 イエスのシングル「Owner Of A Lonely Heart」がリリースされた日

皆さんはオーケストラル・ヒット(Orchestral Hit)という言葉を聞いたことがあるだろうか? これはサンプリング音源の種類の1つで、オーケストラが一斉に楽器を鳴らしたような「ジャン!」とか「ギャッ!」という非常に厚みのある短い音のことである。インターネットで調べたら、ヒップホップの創始者と言われるアフリカ・バンバータが、1982年に「プラネット・ロック」という曲で使ったのが世界初だそうだ。

そして、オーケストラル・ヒットをポップスの世界に浸透させた最大の立役者と言えば、トレヴァー・ホーンだろう。彼は、MTV 開局第1号オンエア楽曲である「ラジオスターの悲劇(Video Killed The Radio Star)」で有名なバグルスやプログレッシブ・ロックバンド、イエスのボーカリストであり、また、バンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」にはプロデューサーとして参加している。

トレヴァー・ホーンが、自身のプロデュースによるイエスの「ロンリー・ハート(Owner Of A Lonely Heart)」のイントロで、当時最先端だったフェアライトCMI というオーストラリア製のサンプラーを駆使してオーケストラル・ヒットを作り出すと、それは瞬く間に一世を風靡し、彼は一躍時の人となった。それ以前にも、彼がプロデュースした ABC の「ルック・オブ・ラヴ」で既にオーケストラル・ヒットの萌芽を見ることができるし、後のフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「トゥー・トライブス」でもふんだんに使われた。

オーケストラル・ヒットは、使用が容易なことや、そのサウンドのインパクトから世界中に普及したが、その流れは J-POP にも影響を与えたようだ。僕自身は全く詳しくないのだが、一時期はビーイング系アーティストの楽曲で多用されたらしい。だが、何と言っても、僕たちの記憶に最も残っているのは、マイケル・ジャクソンの「バッド」のイントロだろうな、きっと。
 
Billboard Chart 
■ Video Killed The Radio Star / The Buggles(79年12月15日 40位) 
■ Do They Know It's Christmas? / Band-Aid(85年1月19日 13位) 
■ Owner Of A Lonely Heart / Yes(84年1月21日1位) 
■ The Look Of Love(Part One) / ABC(83年1月8日 18位) 
■ Two Tribes / Frankie Goes To Hollywood(84年12月15日 43位) 
■ Bad / Michael Jackson(87年10月24日1位) 
 
 
※2016年4月6日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 中川肇

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