F1日本GP出走の山本尚貴に佐藤琢磨がエール「今までの自分のすべてをぶつけていい走りをして欲しい」

 参戦10年目となったNTTインディカー・シリーズ全17戦を終えた佐藤琢磨は、帰国後に早速仕事モードになり日本各地を奔走し始めた。

 先日は新製品「ヤクルト1000」の発表会に登場し、10月6日にはよみうりランドの特設会場で行われたレッドブルボックスカートレース東京2019に参加した。

 このレッドブルボックスカートレースは、「おバカなレースに大まじめ」をテーマに動力のない自家製のカートを製作、丘を駆け下りるダウンヒルでそのパフォーマンスとスピードを競うもの。日本では4度目の開催となる。

 琢磨はパーソナルスポンサーとなるFWD富士生命のゲスト出場枠で参加。インディカーと同じカーナンバー30で、コーポレートカラーのオレンジ色に塗られた「いくぜ、人生電車号」でのエントリーとなった。

選手紹介に登場する佐藤琢磨

 ステージで挨拶に立った琢磨は「このカートはさっき初めて見ました(笑)。僕も自転車競技やっていたから、なんとかなるでしょう」と場内の笑いを誘った。

 スタート地点に立った琢磨はおなじみのヘルメットをかぶり、サムアップするとレーススタート! FWDストレートを勢いよく駆け下りるとスラロームも華麗に通過した。

スタートを待つ佐藤琢磨
ボックスカートレースに挑む佐藤琢磨

 カートも勢いに乗っていて、数々の難所を通過しながら最後の鬼門バンクのついた“ウォール”もスピードに乗って見事に通過すると場内は大歓声に。インディ仕込みのレーシングドライバーらしいところをアピールした。レッドブルアーチをくぐりチェッカーを受けると、上位に匹敵するスピードでゴールした。

 レース後のインタビューで「この日のためにインディでバンクの練習して来ました(笑)。はじめは怖かったけど、走りながらカートの特性を勉強をして、最後のウォールはいくしかないでしょう! いやー、とっても楽しかったです」とにこやかに話した。

 この他にもレッドブルF1ドライバーがデザインし、ホンダのテクニカルカレッジの生徒が製作したアレックス号、マックス号もそれぞれ走行し完走していた。

審査員を務めた山本雅史F1MDは琢磨のパフォーマンスに大喜び。右は高梨沙羅選手

 ボックスカートレース翌日には、トロロッソからF1日本GPの金曜日FP1に山本尚貴の走行することがアナウンスされた。

 ホンダF1ドライバーとして先輩でもあり、個人的にも親交のある琢磨は「素晴らしいニュースだと思います。彼は日本でずっと頑張ってきて、スーパーライセンスを持っている真の王者だと思います」

「彼の才能、速さはすごいと思うし、今までこういうチャンスがなかったのが不思議なくらい。確かに事前のテストもないし、僕が乗っていた頃と比べてもF1は複雑になっているから、どこまでできるかわからないけれども、みんな期待しているし、思いっきり楽しんで欲しいです」とコメント。

 さらに「もし楽しんで乗れれば、最後にニュータイヤを履くような状況になると思うけど、その時は自分の庭である鈴鹿で、今までの自分のすべてをぶつけていい走りをして欲しいと思います」

 ホンダ系チームで日本GPに出走するのは琢磨以来となる山本。トロロッソは琢磨が最後にテストしたF1チームでもある。

「トロロッソも、ホンダもチーム関係者も彼を遊びで乗せているわけではなくて、週末の戦いのレースプログラムを尚貴に託すわけです。この時間によっては、彼の人生が変わる可能性だってある」

「チームは彼のフィードバックとか順応力、タイムの上げ方、すべてを見ています。単なるタイムだけではなく、データでチームはすべてわかりますからね。もしレギュラードライバーと遜色ないタイムで走れたならば、彼のチャンスは大いに広がると思います」と山本へアドバイス。

「彼がF1マシンのコクピットに座って見える風景、ステアリングを握って見える鈴鹿の景色。それを大いに楽しんで欲しいし、楽しめる環境を作って欲しいと思います。そして、ふとした瞬間、90分のプラクティスのチェッカーを受けた後にでもグランドスタンドのファンの皆さんを見てもらえれば、これがF1に乗ることなんだって実感できると思います」とF1日本GPで数々の名レースを繰り広げてきた琢磨ならではのコメントで山本へエールを送った。

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